出社前に情報バラエティを見ていたら、“タムパ” なる言葉を知っているかと問いかけられた。知らんがなとブラウン管… もとい、液晶に注目すると “タイムパフォーマンス” の略とのこと。昨今何かと話題にのぼるZ世代の価値観として、重要どころかスタンダードになっているとのことだ。放送で象徴的に扱われていたのが、まず音楽のイントロやギターソロを飛ばして聴くとのこと。さらに突っ込んで、そんなZ世代のために曲作りもイントロなしの曲が増えているとしていた。さらに、ドラマや映画を倍速再生するとのことを語る若者が多く登場していた。まあ、情報バラエティってのは一方的なサイドから作り込むのが常套手段であるが、この流れは近年如実に感じているところだ。
講座なんかに駆り出されることが、こんないかれポンチでもある。紙媒体やイベントといったリアルにこだわる姿勢がそうさせているのかもしれないが、僕は常にデジタル社会の恩恵はすばらしすぎるを大前提にして組み立てる。だってそうじゃないか。僕が雑誌を生業にしていられるのは、デジタル技術を駆使して昔より経費が奇跡的に減っているからだ。昔のような経費がかかっていたら、広告がほとんど入らない雑誌の存続はありえない。例えば、かつて写真は現像して蛍光灯で照らして選んで、それを印刷の構成をする赤・青・黄・黒の4色に分解してフィルムを作る。その職人技に、もっと青を強めにしてくれとか文句言って最終的な印刷用の4つのハンコに落とし込む。荒っぽい言い方だがそんな工程だったのに、まず現像がなくなった。デジカメだ。選ぶのもPCで楽チン楽チン。分解も同様、PCの Enterキーを押せばよしで、ハンコもそのPCのデータから直接「はい、おしまい」である。これらのコストだけでも何百万円かかっていたのが、現在はほぼゼロである。
と、話は長くなってしまったが、その昔ジャズの名ピアニストのハンク・ジョーンズさんがテレビCMで、「やるもんだ」とデジタル技術を称賛していた。’90年代の中頃だ。そう、Z世代はあの名ピアニストを唸らせた技術がインフラになっている社会に、「おぎゃっ」とお袋から出てきた。その恩恵の中で暮らせば、様々な行動が出てくるのは当然で、酒も呑まなきゃクルマはムダと言い切れる感性を持つのもあたり前田のクラッカーであり、それはそれで称賛すべきだ。そこへと、同じ世代のミュージシャンがイントロをつくらず、サビから始まる名曲を量産するのもこれまたあたり前田のクラッカーだ。だが、かつてだって、サビからガツンといく手法はもちろんあった。アン・ルイスさんの名曲「LUV YA」なんか、タムパ重視のZ世代にもズバッと突き刺さるはずだ。
とは言え、俺たちおっさんにとって寂しい面が横たわっているのも間違いない。ジミ・ヘンドリックスの曲や、ツェッペリン・パープルのライブ盤はほぼほぼ飛ばされてしまう。ギタリスト不要な社会の到来か? そんなわけないが、今も昔もビジネスサイドは消費者寄りにぶっ込んでいくのが仕事だ。あらゆる場面でタムパを意識したモノ・コトを生み出し、それが相乗効果となってタムパが上がっていく社会になる。そこで僕にはビッグチャンスだ。僕は無駄を重視したモノ・コトを生み出しているし、これからも磨きをかけていきたい。Z世代の全てがイントロをぶっ飛ばすわけじやないし、アナログ盤で音楽を大切に楽しみたいなんて若者が増加中だ。クルマ離れは確かに顕著でも、バイクはニーズが高まっている。彼Z世代は、タムパの低さに背を向けているのではない。タムパの高い暮らしの中で鍛えられた選択眼で、これだけは譲れないというモノ・コトを見出すのである。これはなかなか手強い。そこで前述したとおり、俺たちおっさんは無駄文化の中で鍛えられたクオリティを駆使して、新しいモノ・コトを創造していけばよい。パナソニックがまるで予見しているかのようじゃないか。ハンク・ジョーンズを起用してデジタルを「やるもんだ」としているが、当の本人は驚愕はしておらず余裕がある。なるほどなあ。
タムパに立ち向かってビジネス開発するおっさん頑張れ。僕のように逆にチャンスを見出そうとしているなら、それもまた頑張れ。やれやれ、ここのところずっと 最新号 (vol.75) のご紹介、大編集後記をつぶやいていたせいで、やけに長くなっちまった。まったく、タムパの悪いおっさんだぜ (笑) 。
40代おばちゃんでも
PS4でゲームしながらSpotifyで音楽流してタブレットで動画を倍速再生しつつスマホで情報サイトをチラ見という生活
家で同時並行できるモノも増え環境も増えたので昔の10倍時間があってもたりないんよ
なになに⁈「タムパ」だとぉぉぉ〜!
こちとら40年男はLP内の捨て曲(主観的勝手な好みですが)も、いちいち針飛ばすの面倒だし修行僧のように我慢して最初から最後まで聴いてたもんさ。