ライバルで特集を組みたいと思った瞬間に浮かんだのが、矢吹 丈と力石 徹の2人だった。だが今回の特集をさんざん苦しめたのもこの2人だった。
『あしたのジョー』の連載を、リアルタイムで楽しんでいたという昭和40年男は稀だろう。かの有名な力石の葬式は昭和45年のことで、こうした伝説や社会現象を起こした背景に僕らはいない。完全に我々より上の世代である。そのコンテンツをメインにしていいのだろうかと自問自答したのだった。『昭和40年男』を作っていて度々出くわすことでもある。ウルトラマンだってジャイアントロボだって、みんな再放送で夢中になったキャラクターであり、ウルトラマンはセブンを含めて何度も取り上げてきた。問題ないと考えているのは、僕らは “再放送世代” だから。秀逸な番組が何度も何度も流れていた。だが、特集のメインとなるとちょっと話は違うのではないか。表紙にも使いたいが、力石の葬儀に出席した先輩たちから見たら「へっ、昭和40年生まれのガキどもが、ちゃんちゃらおかしいぜ」となるだろう。どうでもいいことのようだが、ウジウジとしているうちに時間ばかりが過ぎていった。
一時は『あしたのジョー』を外した。メインはリアルタイムで影響を受けたライバル関係にしようと。未練たらたらで編集会議を重ねて、カウンタックとBBの関係をメインにしようと決め、撮影に向けてこんな表紙のダミーを作った。これをカメラマンにイメージとして伝え撮影にあたってもらう… はずだったが、ジョーとの未練を捨てられないままに、無駄に時間を垂れ流してしまった。ウジウジウジ。メインでなければ今回の特集からジョーと力石は一切外す。特集の一部で数ページを組むという、中途半端な扱いができない2人だ。やるとなれば11号のキヨシローさんのような、まさに特集を象徴する存在でなければならない。
実家に帰り、中学生の頃に買った単行本を開くと、長い時間の旅がバカバカしいほどこれしかないと決心できた。圧倒的なパワーが伝わってくる名作であり、僕たちはギリギリのリアルタイム世代だと決めつけた。映画で盛り上がりを見せたのが中3のころで、公開後に始まった『あしたのジョー2』のアニメだって夢中で見た。前述のとおり僕たちは再放送世代だから、小学生の頃に見た力石との壮絶なライバル関係は、深いところに根づいている。もっと俯瞰してみれば『あしたのジョー』は日本を代表する名作であり、世代なんかで縛ることのできない最高傑作漫画と言える。
完全に振っ切れ、以前に梶原先生のすばらしい記事を書いてくれたキンと作業を始めた。単行本の山を前にしてどのシーンを誌面に使おうかとアーでもないコーでもないと詰めたのが4月21日だから、いかに切羽詰まっていたかがわかる。同時に表紙作りもこのタイミングで始まった。タイムリミットをはるかに逸脱していた。それでもグッと踏ん張ってジョーの世界に10ページを割き、仕上がりには満足している。さあみなさん、乞うご期待ですぞ。
その通りですよ、編集長様。良いものそして影響を受けた事実に、再放送もへったくれも無いです。
『宇宙戦艦ヤマト」や、「機動戦士ガンダム」も、むしろ再放送でブレイクしたのだから、リアルタイム世代より、あれなんかは再放送世代の方が、影響を受けているでしょうし。
かの『ディズニー』や『トムとジェリー』なんぞには、『世代』という概念すら存在しないでしょうし。
「右手にジャーナル左手にマガジン」なんて言葉が生まれたリアルタイム世代よりも、『明日のジョー』が『神格化』した後に、踏み入れた私たち世代のほうが、羨望の眼差しは強いかもしれません。
私も、中学の時に単行本を集めました。思い出の品なんぞ、片っ端から捨てるタイプの私も、ジョーの単行本だけは、全20巻実家に残ってます。
そして、家の納屋にサンドバッグを吊し、やや内角を狙い、えぐり込むように打つべし、、、したものでした。
ちなみに、その頃、彗星の如く現れた『カンムリワシ具志堅』にハマりました。
僕も片っ端から捨てるタイプで、カセットテープも全部捨てちまったくらいですから。でも僕の実家にはジョーの単行本と当時のミュージックライフとギターマガジンだけは残してあります(笑)。一緒ですな。それと気が付きました。明日のジョーに強い影響を受けていたから、僕らは具志堅に熱狂したのですね。