〆切の現場より。

まだまだ作業は続いている。印刷所とスレスレの交渉をしながら、禁酒と寝不足の日々がまだ終らない。おそらく今夜が峠となり、明日は印刷所に米つきバッタのように謝り続ける。休日だったはずの印刷所の方々に申し訳ない。家族で出かける予定だったかもしれないと思うと心苦しい。

ふと、こんな展開になったらどうしようなんて、脳裏をよぎったのだった。
「今日は動物園に行く約束だったじゃないか、パパのバカっ」
「『昭和40年男』って本を作らなくちゃいけないんだ。お仕事なんだよ。わかるな」
「わかんないよ、バカバカバカ」と、楽しみにしていたゴールデンウィークを奪った仇は『昭和40年男』なんだと心に刻まれた少年だ。その後も夏休み、年末と立て続けにパパがウソをつくのは『昭和40年男』と、心に刻まれた傷は深くになる一方のままに成長していった。やがて大学を出た少年は就職する。きっと今から15年くらい先のことだ。どうしても『昭和40年男』に仕返しがしてやりたくなり、取り次ぎと呼ばれる出版問屋に入社した。そしてついに復習の日がやってきた。かねてから希望していた出版社窓口担当となったのだ。説明しよう。出版業界というヤツは問屋がものすごく強い業界で、窓口担当が部数を決定するといっていい。あくまでこの現状を未来に刷り込んでの空想の世界だ。

「あっ、新しい担当さんですね。始めまして。『昭和40年男』の担当をしてます北村です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。早速ですが、前号のデータですが…。ああ、いいじゃないですか」
「そうでしょう。特集の『いよいよ定年』がよかったんですよ、きっと」
「そうですね。今どきこんなに売れている雑誌ないですよ」
「でしょう。次号も攻めの部決(納入部数の決定)をお願いしますよ。もうスゴイ特集ですから」
「へえ、どんな特集ですか?」
「定年の後ですからズバリ、墓石選びですよハッハッハ。もう、今号どころじゃないですよ。売れまくりますよ」
「ところで最近、作業の進行はどうなんですか? 印刷所をいじめてませんよね」
「まあボチボチですよ」
「ボチボチぃ〜? ですか」
「あまり取り次ぎさんとは関係ないですよね。いいや、納期は落としませんから」
「…、次号ウチは『昭和40年男』取りません。よそにたくさん取ってもらってください」
「えっ、なんでですか」
「理由なんてどうだっていいでしょう。私は『昭和40年男』が嫌いなんですよ。それで十分でしょう」
そして笑うセールスマン風に。

「私が子供の頃、あなたは家族の楽しみを奪ったんですよ。私の父は○○印刷で働いていましたからね。ドーン」

そんなことにならないように次号はがんばるぞと心に誓いながら、山積みになった作業に囲まれているのだった…。明日に続く。

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