生姜焼き定食で、丼2杯の白飯。

昼休みに街に出てみたらビジネスマンはまばらで、楽しげに過ぎていく観光客が多く見受けられた。笑顔で通り過ぎていく家族連れを見ていると、こっちまでいい気分になってくる。浜松町は観光の名所でもあるから、このにぎやかさが失われることはほとんど無くて、これは〆切時にはけっこう救われる。完璧なビジネス街で、それこそ連休の真ん中に仕事していると、人が少なくて寂しくなってくる。ぽつりと遠慮がちに開けているコンビニで、ラインナップの少ない弁当を選んでいるときの切なさったらない。

酒を呑まない日が続いて健康的に腹が減る。二日酔いのへんな空腹感と違って、部活が終った後のような若々しいハラペコ感覚だ。こんなときは丼の白いご飯をかき込みたくなる。休んでいるビジネスマンが多いようだから空いているだろうと、いつも気になっていた居酒屋に行ってみた。こうした店のランチに観光客は入らないから、今日みたいな日は穴場になるのだ。加えて夜に使ってみたいなといつも眺めている面構えのいい店であり、ランチでテストするのにちょうどいい。看板をしっかりとのぞき込み、ご飯おかわり自由を確認していざ入店した。

思った通り店は空いていて、人目を気にせずご飯をかき込めるぞとメニューに悩む。普段なら焼き魚か刺身定食でキマリのはずが、今日は生姜焼きにした。ガツンとご飯を食べるにはこの選択だろう。しようが焼きはアタリハズレがあまりなくて、ご飯がすすむランチの王様だ。どんな肉を使うかで好みは別れるところだけど、僕はなんといってもバラの薄切りでタマネギがごそっと入っている安っぽいのが好きだ。ロースで厚めに切ってあるのもうまいけど、豚は細切れになっちまったバラでしょう。初めての店なんで待つ間は本なんか読んでいるふりして、どんな肉で出てくるかしばし空想の時間だった。

「お待たせしました」と、居酒屋はおばちゃんがよく似合う。みそ汁に小さなうどん、香の物と生卵がついて900円は浜松町のランチとしてはやや高い部類だが、なにしろ夜のテストであるとの使命があるから良しとしよう。それにご飯を確実におかわりすることを考えれば妥当な値段になる。おかわり無料でない店で調子に乗ると1000円を超えちまう普段から大食らいなうえ、何日も酒を口にしていないから3杯は楽勝だぜと箸をつけた。肉は残念(!?)ながら整って切り分けられたロースで、油も適度に掃除されている。下品なバラでないが丁寧な仕事に好感を持つ。うどんの出汁もよいし、卵ご飯で感じた卓上の醤油もよい。これは夜に期待できるぞと好感触だ。さあ、エンジン全開でご飯をかき込む。けっこう大きな丼でおかわりは一杯で大満足だった。最後は皿に残ったタレをぶっかけてきれいに完食で、これも空いているから堂々とできる。それにしても生姜焼きは、白いご飯の永遠の恋人だね。別れちゃダメだぞと店を後にした(笑)。

それにしても皮肉な話だ。酒を呑むためにテストに出かけたのは、酒を呑まない日が続いていてガツンと食いたいからである。せっかく酒を呑まない健康的な日々なのに、46歳のおっさんが高校生みたいに丼メシを山盛り2杯もかき込んでしまい、でも結局ここにはいずれ呑みにくる。うーむ、どうも負のスパイラルってのにつかまっているように思えてならんが、これも呑んベえ生きる道だな。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で