昨日の夕方に表紙のデータを印刷所に渡した。5月11日発売の次号特集タイトルはシンプルに『ライバル』だ。教育がそうだったからか、幼少の頃からのテレビの影響か、昭和40年男にとってライバルは必要不可欠な存在だった。「競争相手を見つけて強くなれ」と、そんな言葉が毎日のように飛び回っていた。
ひと口にライバルと言っても様々で、実はこのテーマに決めたはいいがずいぶんと右往左往してしまった。当初は仮面ライダーの1号と2号を僕らにとって究極のライバルと位置づけて、特集の頭で藤岡さんと佐々木さんのロング対談10ページで幕を開ける特集にしようと企てた。表紙は素晴らしいラフスケッチの通り、ライダー1、2号が向か合っていて、その間に大きくライバルとタイトルを入れる。おーっ、決まった。これを書いたのは4ヶ月も前のことだったが、なんかちょっと違うだろといったんご破算にした。
ライバルというテーマは捨てたくなかった。よくよく考えたらライバルを持てとの社会でなくなって久しいような気がする。オンリーワンだかなんだか知らんが、そんなんだったら無人島へ行ってマリファナでも吸いながら理解できない絵画でも書いていやがれーっ!! こんな言葉になってしまうのは、音楽をつくることに夢中になっていた高校生のとき、呑み屋(時効!!)で知り合った方にアートとクリエイティブの違いってヤツを教わったことがベースにある。音楽はアートだとした僕の言葉に噛み付いてきて、自分の表現だけに没頭できて相手に一切媚びることなくやれるならお前の音楽はアートだとさとされた。本質論は別の話としておこう。これはハイティーンの僕がガツンと受けた、今も心に残る経験の話だ。「無人島に行って誰も聴いてくれなくても365日歌うことができたら、お前の音楽はアートだ。もしもお客さんに聴いてもらいたいとの気持ちが微塵でもあるなら、それはクリエイティブなんだ。アーティストでなくクリエイターになるべきなんだ」と。僕はこの言葉に脳天を引っ叩かれ、目の前がブワーっと広がった気がした。自分の行動に整理が付けられたからだ。表現である以上、アートの部分は残さなければつまらなくなる。そのバランスの上に成り立っていることもひっくるめて、クリエイティブなんだと。
えっ、ライバルの話? まあまあ。つまりオンリーワンなんて言葉で逃げてはならない。それがクリエイターなのだ。相手のことや競合のこと、その他もろもろを突き詰めて考えて生み出すのは、周囲を蹴散らしてでもやれという部分が含まれる。自分自身の個性を表現できればオンリーワン。心が喜ぶことができればオンリーワン。人なんて気にしなくていいオンリーワン。ワンワンワンって犬かっての。そんなんでおまんま食えるはずがない。まあ、逆に言えば競争相手がいなくてコツコツと努力できるほど僕は真面目じゃない。だらしないヤツだからスリルが欲しくなる。そもそも♩血の汗流せ、涙を拭くな♩と、毎日のように聴かせれていた僕らが、競争なしでやる気が湧いてくるはずがない。だから僕にはライバルが必要なのであって、多くの昭和40年男がオンリーワン社会に違和感を唱えているはずだとの勝手な信念に基づいて、このテーマを強行している。おーっ、なんとワガママな話なんだ。
それでは本題です。『昭和40年男』が原点としたライバル関係、それはつまり今回の表紙ビジュアルになにを使ったでしょう?ということだ。人だけでなく、もともとテーマにしようとしていた仮面ライダーのようなヒーローだったり、プロダクトにもたくさんのライバル関係はある。アイドルやロックバンドなんかだって相対する関係は多い。
今回の表紙は僕にとって最も影響を受けたライバル関係だと、自信を持ってチョイスしたのだ。さて次号の表紙を飾るのは?
今回採用した以外で僕がパッと思いつく表紙をヒントにしましょう。やりたかったのはストーンズのミックとキースだね。でもこれじゃあ、書店の音楽誌のコーナーに行って埋没して終わるだろう。ホンダのCBとカワサキのZなんてのもいいけど、これだと僕らの会社の主戦場である、バイク雑誌コーナーに行ってオシマイですな。ミートソースとナポリタンなんてのもおもしろいねえ。コカコーラとペプシコーラの昔のビンをセンターでぶった切ってくっつけて、ライバルってドカーンと表紙にするのもやってみたかった。フッフッフ、いろんなことを考えて楽しかったのだよ。でも産みの苦しみにつぶされそうにもなったのさ。さあ、乞うご期待!!
昭和40年男と平成元年男……
おもしろいですね。
実はぼくは音楽の専門学校を出たのですが、
そういえばウチの学校、競争を煽ることなかったですね。
高校までのうるさいほどの喧騒と比べると、
和やかで、教師も生徒もフレンドリーに楽しく授業をやっていました。
ぼくらは「ああ、これが大人の世界というものか。高校まであんなに一生懸命
頑張ったもんな。」・・・・・と、まるですでにゴールインしたかのように、
大いなる勘違いをしていました。
聴き手のことを何にも考えずに作品を作っていたような気がします。
身内受けばかり狙って。
その分、卒業してから大いに苦労しました。。。(笑)
実はまだ、夢は諦めてません。
あの頃と違ってネット時代ですし、出来る可能性は拡がったと思います。
若さとは大いなる勘違いの連続ですよね。でも、その数が多いほどいいのではないかと思います。そしてこれからも、まだまだ勘違いの連続でいいのかなと。やらないよりはやった方がきっと力がつくはずですよね。夢を諦めない、ステキですね。互いにがんばりましょう。