夏が来れば思い出す。

爽やかなメロディーが浮かんできますな。戦後まもなくNHKから流れたこの曲によって尾瀬が人気の地になったとか。いいものが心に飛び込んで人の動きや暮らしの彩りを作る。コンテンツのあるべき姿ですな。

 

さて、夏になるとコイツが読みたくなる。あだち充さんはそれまでスポ根マンガばかりを好んでいた俺たち世代に、突然割って入り込んできたやさしき革命者だった。太賀 誠と早乙女愛の愛とは、その見え方がまったく異なる男女を示した。まっ、本質は変わらないと言ってしまえばちゃんちゃんではあるが、身近に感じさせてくれる恋愛を描いた特品が、’80年代に入ると俄然増えた。その中でもセンスよくストーリーをリードしつつも、スポ根好きの俺たちを感動させたあだちさんに感謝である。

 

『ナイン』『タッチ』『みゆき』『陽あたり良好!』などなど、数あるあだち作品の中でベストを挙げよと言われたら、ご覧の『H2』にしようかな…。というほど好きなのは、主人公が夏の甲子園で投げるために生まれてきた野球少年だからだ。春夏の甲子園出場を果たすが、やはりこのドラマは最終回へとつながる3年時の夏の大会が最高潮となり、夏好きの僕を酔わせる。夏マンガとしてひとたび手に取れば盛り上げてくれるのだ。とは言え、この作品の連載が始まったのは 1992年だから、同世代諸氏でこの作品に馴染みのある方は少数だろう。僕もリアルタイムで連載に親しんだわけでなく、この写真の文庫になってから何気なくあだち作品だからと手に取ったのだ。ずいぶんとおっさんになってから高校生の青春に触れたことになる。そして57歳の夏もまた手に取っているのはいかがなものかとも思ってしまったりして。

 

もう一つ、夏マンガの傑作が吉田 聡さんの『スローニン』だ。こちらは浪人生とラグビーで挫折した大男のひと夏を描いていて、まるで海風の香りがしてくるような快作である。こちらも吉田作品だからと、古本屋で何げなく手に取った。単行本4冊の中に若者らしい苦悩と爽やかな前進が描かれていて、リフレッシュさせてくれる。そう、夏はいつも成長を促してくれる。それは、今も変わらないのさと確認したくて、この2作を夏になると読み返すのだ。ああ夏よ、いかないで!!
 

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