昨日もお伝えしたように、コピーライターの仲畑貴志さんのインタビューにいってきた。連載特集の『夢、あふれていた俺たちの時代』では昭和51年を取り上げるのだが、いろいろと調べていくうちに、あるCMにたどり着いた。それが『サントリーゴールド900』のCMである。商品名ではちょっとピンとこないかもしれないが、「ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか~」で始まり「俺もお前も大物だ~」で締める、野坂昭如さんの野太い声は昭和40年男たちの記憶にバッチリと残っているだろう。白のスーツに身を包んでキメたクール(!?)なダンスも、決めゼリフの前の女性コーラスによる「おっきいわ、大物よ」も、完璧に記憶しているのではないだろうか。あの曲のコピー(詞)を書いたのが、仲畑さんである。昨日解説した“好きだからあげる”も、きっと多くの昭和40年男が記憶しているだろうし、その他にも桃井かおりさんがバッチリハマった「世の中バカが多くて疲れません」や、戸川純さんが強烈だった「お尻だって洗ってほしい」、最近では「ココロも満タンに」やセゾンカードのステテコ姿の爺さんがで大車輪をきめるCMなど、知っている広告物をあげたらきりがないほどだ。昭和22年生まれの先輩は今も現場にこだわり、広告をつくり続けている。
若い。この業界に入り、小僧の頃に読みあさった雑誌のインタビュー記事などで見かけた姿そのままだった。20年以上前からほとんど変わってないのは、現場の最前線で仕事をしているからだろう。毎日酒を楽しんでいるとおっしゃっていた。いつも後半は覚えていないとの言葉に笑っていたら、昭和40年生まれだってもうすぐだからなと返されたが、すでにそんな症状なのは困ったものだ。
コピーライターというと、横文字商売の典型のように感じる方もいるだろうが、仲畑さんはそのイメージとはまったく異なる方だ。絶対に勝つ広告を目指す武闘派であり、ライバルはつぶしてやるとの気概を持って仕事をしてきたとおっしゃっていた。素晴らしい。仕事は戦いなのだ。同じような話で、以前バイクレーサーの平忠彦さんに話をうかがったときに、最近のライダーは他のチームのヤツとしゃべっていたりするけど考えられないとおっしゃっていた。敵と仲良くなんか絶対にできないと。仲畑さんは時代による熱量が下がっているとも憂いていた。ドンドン悪くなる。だがきっと、また熱を帯びる時代が来るはずだとも話していた。
僕は昔から仲畑さんの仕事が大好きだ。それは言葉や制作を通じて対象であるたとえば製品のシフトチェンジを起こすからだ。昨日も例にあげた“好きだからあげる”はギフトを日常へとシフトさせるものだった。“目の付けどころがシャープでしょ”と投げかけることで、シャープ製品のそもそもユーザーが抱いていたイメージをしっかりと一本化するかのごとく定着させたりといった効能をもたらしたり、チェンジを起こした仕事は数えきれないほどある。選ばれる言葉は日常的に使うごくシンプルなものを組み合わせていて、対象物の特性と組合わさったときにすさまじい威力を発揮する。チョイスが大事なんだとしきりにおっしゃっていたが、深く頷くばかりだった。
話している内容や熱はまるで泉谷しげるさんのようで、思っていた通りの方だったのがうれしかった。いつかもう一度、ロングインタビューを実現させたい。今からその日が楽しみである。と、その前に今回もおもしろい記事なるのは間違いない。乞うご期待ですぞ。