発売直後の恒例行事、大編集後記を続けていく。ご購入いただけてない方にはその気になってもらい、ご購入いただいた方には作り手との距離を縮めていただければ幸いである。
今回 (vol.74) は夜を特集した。4つの章で構成した第一章を「ラジオで造られたひとりの世界」とタイトルして、俺たちが最もラジオを欲していた頃に活躍したパーソナリティの面々にご登場いただいている。俺たち世代にとって、そのトップバッターはこの人以外はあるまい。俺たちの股間を直撃した笑福亭鶴光さんである。
今の中坊たちがあの放送を聞いて興奮するだろうか? スマホの中にエロがあふれている現代から見ると、 ネットなんてその影も形もなかったあの時代に流通したエロは、量も質も雲泥どころの差ではない。そんな時代だから、妄想を逞しく育んだのが俺たち世代だ。電話口に出ている女の子はほとんどが年上だった。そこに鶴光さんが毎度お馴染みのクエスチョンを投げると、声だけで妄想しているかわいい年上の女の子が恥じらいながら「ピンク」と答える。これほどの興奮はそれまで味わったことがなかった。夜の闇の中、布団の中でゾクゾクドキドキしながら聴き入った。同世代男性諸氏でこの経験をしていない者はゼロではなかろうか。さすがにゼロは大袈裟かもしれないが、まあ、ほとんどが鶴光さんに脳の中をかき回されたはずだ。
だが、朝の5時まできちんと付き合える日は少なかった。途中でいつの間にか寝入っていて、朝もイヤホンからラジオの音が漏れているのを何度繰り返したことか。逆に、空が白み始めて今日はいけると眠い目を擦りながらがんばった末に聴こえてくる、エンディングの「ビタースウィート・サンバ」には大勝利の気分を得た。ラジオのスイッチを消して眠りにつく時は、戦いを終えた戦士の気分だ。
そんな俺たちの血肉となっている鶴光さんの当時の話を、た〜っぷりとお届けしている記事だ。1974年にスタートしたとのことだから、俺たち世代が聴き始めた頃にはもうずいぶんと練り上げられた番組だったということかもしれない。みなさんは中学何年生の頃が鶴光さんの初体験だろうか? 僕の記憶は曖昧ながら、中1の夏だった気がする。クラスで話題になったのに乗っかってのことで、オピニオンリーダーではなかった。初めて鶴光さんと接触した時は、大人の階段を上った気がしたことをはっきりと記憶している。鶴光さん、ありがとうございました。と、そんな気分にまでさせてくれる最新号を今すぐゲットしていただきたい!!