最新号 (vol.74) の 特集 は、このページでスタートする。毎度表紙とともに苦心するページなのだが、今回の表紙は副編竹部のアイデアですんなりとハマったから、その分扉ページはがんばらなくてはとあれこれ悩んでいたがパシッとハマるビジュアルが見つからない。撮影するにも現在の夜は明る過ぎるから、特集のイメージに合わない。いつも僕をしっかりとサポートしてくれる編集部の松崎には「中学生になったばかり、つまり昭和53年の東京の暗い感じで探してくれ」と伝えていた。が、見つかってもほとんどがモノクロである。唯一カラーで見つかったのは、浅草で毎年多くのギャラリーを集めて開催される「隅田川花火大会」で、そんな賑々しいのは当然ながらダメだ。うーむ。
段々とお尻に火がついてきたある日、竹部を頼った。「いい写真が見つからないんだよ」と。しばしの議論の後に「ゴールデン街があります」と来た。聞けば、本文では1点しか使わないが、撮り下ろしたバリエーションがあるとのことだ。早速見せてもらうとこれが宝の山だった。表紙に続き扉までも、竹部におぶさって作ったことになる。ありがたや。
リード文に気合を入れて写真のバリエーションで7つの扉を作り込み、断然これだと決定したのが本日のビジュアルである。現在の写真ながら、昭和の空気がムンムンと漂っているじゃないか。こうしてお気に入りの特集扉ができたのである。
リード文で言いたかったことのど真ん中は、ファミレスで時間を潰すようには過ごさなかったのが俺たち世代なんだとした。冒険心を持ち、夜を徘徊するかのごとくうごめいていた。ツボとなる対象はそれぞれに異なるだろうが、夜の中に感じていたことは共通していたはずだ。スリルであり、刺激だ。明るいファミレスにそれはなく、まさしく時間を潰すための空間である。それはそれで快適だし、長時間語り合うのは過ごし方としては悪くない。友情を深めるのにもいいかもしれないが、俺たちの夜にファミレスはまだまだ少なかったから、スリルの夜が自然だっただけのことと言えなくもない。まあともかくだ、今回の特集にはこのスリルと刺激が随所で醸し出されている。各々の記事に詰め込まれた俺たちの夜を、じっくりと取り戻していただきたい。さあ、書店へと走れ!!