権威あるアメリカの音楽誌、ローリングストーンがミュージシャンやエンジニア、評論家などなど180人を集めて投票を行い発表した『世界で最も偉大なボーカリスト100人』をネタにして、ずいぶんと長いこと私見を述べてきた。4年前に発表されたランキングでここまで盛り上がれるのは、多くの昭和40年男がそうであるように、音楽と真面目につき合ったからだ。長期連載となった、いよいよ残りはベスト3。では、いってみよう。
第3位はエルビス・プレスリーときた。あまり夢中になったことはなく、あのアメリカ~ンな感じはどうも苦手だ。とはいうものの『ブルー・ムーン』『ザッツ・オールライト』『監獄ロック』あたりを好んで聴いた時期があって、とくに『ブルー・ムーン』は大好きだった。あのスイートさは今振り返ると懐かしく、こうして書きながら思い出した記憶である。最後にキチンと聴いたのはおそらく16~7歳の頃じゃないかな(なんと30年前!!)。このランキングのおかげでベストの1枚でも買ってこようかとの気持ちになったのは、得した気分でもある。彼そのものがロックンロールであり、後に与えた影響などから考えれば、あまりにも偉大なシンガーの1人であることはいうまでもない。
そして2位には、レイ・チャールズだ。大好きっす。昭和40年男にとっては『ウイ・アー・ザ・ワールド』が最もよく知られるところだろう。あの独特のうねるリズムが、レイ・チャールズの歌そのものだ。メイキングビデオにオケ無しの歌声が収録されていたが、まるっきりリズムになっていないように聞こえる。ところが演奏と一緒になるとビタッと決まって、自由自在に泳ぐような特上の歌になる。『ブルース・ブラザース』に夢中になったタメ年たちも多いのではないだろうか。ジョン・リー・フッカーの出演といい、すばらしい映画だね。何度見ても楽しくて飽きないのは、こうした偉大なミュージシャンたちの音楽がそのままに使われているからだろう。そしてもうひとつ、昭和40年男の記憶に強く残るのが、この偉大なシンガーに日本のヒット曲を歌わせてCMをつくったことだろう。1989年のことで、日本が次々とアメリカのものを買っていたころだ。なんとレイ・チャールズの声まで買ってしまった、バブルジャパンのちょっと恥ずべき歴史かな?
僕は来日公演に1度だけ行って、1番前のほぼ中央で見た。あたり前のことだが、レコードそのまんまの歌声とリズムが本当にレイ・チャールズから出てくる。これは奇跡なんだと心の底から感じた夜だった。もう一度観たかったが、残念ながら僕にとってはこの夜にだけ体験した奇跡だった。
さあ、1位は? そうかこの人がいた、アレサ・フランクリンだ。もろにゴスペルだが、ここまでいくと気持ちいい。それにそんな枠なんかで語れない、神様にもっとも近い所にいるシンガーじゃないかな。夢中になって追っかけた人でないが、聴くたびにうれしくなってしまう。このランキングを締めくくるにふさわしい人だ。
いやはや、すばらしいランキングだった。が、不満がないわけでない。まず、ライトニン・ホプキンスがいないこと。数多く存在する好きなブルースシンガーの中で、マディ・ウォーターズ、ジョン・リー・フッカー、ハウリン・ウルフとともに、別格にいる4人を僕はブルース四天王として愛している。その中でも好みのランキングをつけると、ここに書き並べたままに順位が上がっていき、1位はハウリン・ウルフと鼻差でライトニンなのだが、まさかランク外とは。
それと、ザ・バンドのリヴォン・ヘルムが91位にいたのに、スーパーボーカリスト、リチャード・マニュエルがいないのはなぜ? 『ミュージック・フロム・ビック・ピンク』を聴いたのかーっと叫びたくなる。J・ガイルズバンドのピーター・ウルフとインエクセスのマイケル・ハッチェンスは? 愛するリッキー・リー・ジョーンズが入っていないのは…、と、個人的な突っ込みどころも多々あるがみなさんはいかがだろう? そうそう、あの人。忌野清志郎は? ローリングストーン誌じゃ無理か(笑)。