『世界で最も偉大なボーカリスト100人』とはなんと魅力的なタイトルだろうか。権威あるアメリカの音楽誌、ローリングストーンによるもので、4年前に発表されたランキングを今さらながら見つけてしまった。昭和40年男にはたまらない、なじみ深いシンガーが多く、実によくできたランキングだった。私見をぶつけながらの長期連載となったが、いよいよ残りはベスト5。では、いってみよう。
こうきたか。第5位はジョン・レノンだ。ビートルズ嫌いだった僕を引きつけたのはジョンの声だった。魂がジワジワと染み出てくるような声の素晴らしさに、情けないことだがこの世から姿を消してから惚れた。イマジンはもちろん知っていたが、当時の僕はビートルズ的なものととらえていた。『スターティング・オーバー』のヒットをリアルタイムで対峙したタメ年たちは多いだろう。亡くなったことの大きさを知り、その上でヒットを体験しながらも当時は、やはりビートルズ界隈は好きじゃないなとの評価だった。
音楽を本気でプレイするようになり、歌を始めた頃に友人から「歌う人が聴かないのはおかしい」と、勧められるままに『ジョンの魂』に針を落としていきなりの『マザー』に完全ノックアウトだった。同時に洋楽を聴き始めてからしばらくの間、ビートルズ界隈と距離を置いていたことを悔やんだ。そして、すでにジョンがこの世から去った日をリアルタイムで知っていることを思い出し、ずいぶん遅れて喪失感を味わったのだった。いやはや、若さとはバカさである、って僕だけか。それにしても、ポールが11位でジョンが5位とは、いろんな解釈があるがこれでいいのではないだろうか? 僕はただ頷くのみだ。
続く第4位はサム・クックで、ほとんどの昭和40年男にとっては馴染みがないのではないだろうか。僕は一時聴きまくっていた、ロッド・スチュワートが最もリスペクトしているとの情報を元に聴き始めた。このランキングのいうところの偉大さでは心の底から頷けるのだが、先日オーティスのところでふれたアメリカすぎるシンガーではある。名曲『チェンジ・イズ・ゴナ・カム』の2人の歌い方の違いが、そのまま僕が支持するブラックミュージックのベクトルで、オーティスの憂いを含んだ歌唱の方にどうしても耳を奪われる。
ただある日のこと『ワンダフル・ワールド』を歌うことになったときに、大発見があった。あんなに軽々とカンタンそうに歌っている曲が、まったくカタチに出来ない。とてもじゃないが人前で歌えるレベルにならないのだ。今考えれば目一杯恥ずかしい話であるが、さすが世界一のソウルシンガーだと知ることになった瞬間だった…、って、ここでも露呈した、若さとはバカさである。
ありゃりゃ、ベスト5に入って2人しか追えなかったじゃないの(笑)。