権威あるアメリカの音楽誌、ローリングストーンが4年前に発表した世界で最も偉大なボーカリスト100人なるランキングを今さらながら見つけてしまった。そんな古いデータで盛り上がるのはいかがなものかと突っ込みながら、私見をぶつけながら盛り上がってきた。これが昭和40年男の琴線に触れる、実によくできたランキングなのだ。長期連載となったが、いよいよ残りはベストテン。では10位から、いってみよう。
まず10位はジェイムス・ブラウンときた。1位だったとしてもまったく文句が出ない人ですな。1度生で見たかった。続いてはスティービー・ワンダーが9位で、こちらも頷くしかない。もうなんの文句もありません。まさに偉大なシンガーランキングが続いている。
そして8位には、この人。もしも僕に1票をもらえたら3日3晩悩んでこう書くでしょう。オーティス・レディングと。アルバムのすべてを新品で買った、唯一の人だ。歌がこれほど強烈ですばらしいものだと、僕を高い場所へと連れて行ってくれた出合いだった。ライブ盤に収録された『トライ・ア・リトル・テンダーネス』は、涙が自然とこぼれてしまう不覚を何度も経験した。
中学で洋楽にハマり、始めは曲単位で聴いていたが徐々に好みに傾向が出始めていった。ブルースやR&Bを独自の解釈で取り入れたバンドを好むようになった。ストーンズがわかりやすい存在だ。うまい昇華のさせ方をしているバンドを次々と聴きあさり、やがて源流を求めていった。魂を根こそぎ持っていかれた、黒人たちのブルースと出会った。同じく黒人シンガーによるR&Bに出会っていくのだが、戸惑いを持ってしまうビッグネームが少なくなかった。妙に明るい曲をテンポよく打ち込んでくるシンガーや、ゴスペル色が強すぎるシンガーだ。アメリカっぽいといえばそこまでなのだが、好んで聴いていたバンドたちが持っている攻撃的なものがなくて、どうしても能天気なルンルンミュージックに聞こえてくる。歌唱の素晴らしさはわかるのだが、好みではなかった。だがオーティスはそんな僕にピタッとハマったのだった。圧倒的なパワーの奥に、憂いを帯びたような哀愁が漂い、ロックっぽく鋭角的に押す部分も持っていた。初めてストーンズよりも凄みを感じた存在だった。と、ついつい興奮してしまう存在が、うーむ、8位か。
続いての、ボブ・ディランからもたくさんの影響を受けた。近々『懐かしの名盤ジャンジャカジャーン』で追っかけようと、最近改めて聴き込んでいる。そして6位には“わっつごーいのん”のマービン・ゲイだ。パワーとテクニックが見事にバランスされたシンガーで、聴けたびに唸ってしまう。さあ、残すは5人となった。