締め切り後の編集部のデスクには、資料が散乱していて楽しい。その中からこんな一冊を見つけた。1986年の『宝島』である。いやー、それにしてもこの表紙攻めてますなあ。きっと作っていて楽しいだろうなというのが、今もヒシヒシと伝わってくる。こういう雑誌作りをしていた先輩と酒でも呑みたいなあと妄想してしまうほど、惚れ惚れするぜ。
表紙をめくれば、いきなりP-モデルとRCサクセションの広告ときたもんだ。これだけでもワクワクする。そしてさらに、記憶の彼方にすっ飛んでいた、ブライアン・フェリーを起用した富士フイルムのビデオテープの広告が見開きで展開しているじゃないか。楽しい楽しい。そしていよいよ、本編のスタートである。
アン・ルイスさんが6月9日をロックの日と宣言して開いたロックパーティ、題して「ANN CALL ’86」の写真はぬぁんとアンさんと我らが清志郎が一緒に歌っている。か、か、かっちょいい。しかもキャプションによると曲は「六本木心中」だとしている。ふーっ、参ったぜ。「宝島特選 ザ・ロッカーズコレクション」とタイトルされたドアタマの4ページには、BOØWY&吉川晃司、ストリート・スライダーズ、遠藤ミチロウ、おおーっ 懐かしのサンディ&ザ・サンセッツなんて面々が並ぶ。かっこいいぜ、編集長!!
A5サイズの小さな判型ながら情報量と熱量が半端じゃない。『昭和40年男』でいうところの「明日への元気と夢を満載!」としたキャッチコピーは「ロック、ファッション & ストリート情報マガジン」だ。この本の中に収まると、松本伊代さんも目一杯ロックしている。そしてめくっていくとモノクロページに現れたのは、敬愛するSIONさんだ。そうそう、少し以前にアルバムをリリースしていてすげーよかったのに、レビューをつぶやいていないことに気がついた。いかんいかん、後日書くことにする。このシオンさんの広告はツアーのもので、キャッチコピーは「沈黙の暴力になれるなよ、俺は散弾銃を撃つ。」だってさ。
とにかく雑誌だ。“雑” の字が似合うマグマのような一冊だ。表現に遠慮のない時代ってのは、こうまで雑誌をおもしろくするんだなと、あらためて感心させられた。そこに乗っかった闊達な文章が散りばめられていて、宝島にはちょっと似合わない表現だけどクオリティがすこぶる高い。これを多感な頃に読めた俺たちはやはり幸せだなあ。そして見習いたい。時代のせいになんかしないで、いい雑誌を作らなければな。