ボトルの勲章。

ジャーン。これは浅草にある寿司屋ののボトルだ。魚系の店をチェーン展開する会社さんで、この寿司屋ではリーズナブルなお値段で天然の生本鮪が食えるからこんな風になってしまった。養殖の生本鮪を出す店は多いが、天然は相応の予算がないとなかなか食えない。

 

ボトルにかけるタグは男の勲書である。スナックなんかではほとんどが平等にかけてもらえるはずだが、呑み屋では時折不平等だったりする。だから、その不平等をくぐり抜けた時に男は満足感を得るのである。酒場というのは様々なことを教えてくれる場所なのだ。ちなみに、昭和25年創業の浅草きっての名店「水口」では、しばらくの間ボトルは名前を書いたシールが貼られる。少なくとも5本目くらいまで僕のボトルはそうだった。それが今年、通い続けて何年だろうかついにタグがついた。あの名店に一人前だと認められたのだ。これをものすごくうれしく思うことを書いちゃうのは、ハードボイルドな僕らしくないな (笑) 。つまりそれだけ店にお金を落としたことになるが、そんなことは決して考えないのが酒場の掟だ。だが「水口」ではニューボトルのたびにタグをかけることはしないから、長くずっと同じタグを使い込む。これもまた、いとおかしだ。

 

で、上記のボトルは他の客にはしていないサービスな気がして、これまた不平等である。ボトル棚を見てもこんなのはないし、最近は増やしてくれないからちょっと寂しい。が、先日うれしかったのは「韓国の言葉で北村と書いたよ (右) 」と店員さんがニュータグを増やしてくれたのである。日本語の調子が少しだけおかしいから、そうか韓国の方だったのかとガッテンガッテンした。なんだかほっこりするじゃないか。たかがタグ、されどタグである。そして大袈裟に考えれば、民間での日韓関係にはこうして別段隔たりはない。そりゃあ、互いの国家にロイヤリティを持って自論を戦わせたら色々とあるだろうが、それをうまく飲み込んで付き合うのが大人である。ここのところ、大人じゃない方が韓国大統領に就任するからこんなにも冷え込んじまったじゃないか。な〜んてことを考えながらボトルを見つめてしまった。

 

このタグ武装したボトルは店で威力を発揮する。というのも、チェーン店ゆえ寿司屋のくせに人事異動が激しい。カウンター越しにシャレの効いた会話をするのが醍醐味なのに、板長以下店員さんがコロコロと異動するのだ。が、その度にこのボトルによって僕は長老様になれる。そして新しい板長が「これどうぞ。召し上がってください」とちょこっとした肴を提供してくれる。うんうん、やっぱり酒場っていいですな。
 

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