『ドカベン』も予言の書!?『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』その一部を公開! 6/29の刊行記念イベント&配信も注目!!

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おはこんばんちはです!
今回は「S40ニュース!」もからめつつのWeb特集としてお送りします。

今年の頭、2022年 1月に惜しまれつつもこの世を去った、野球マンガの巨匠・水島新司先生。

「このシ-ン、どこかで見たことがある!」と感じた時… それは往々にして水島先生によってすでに描かれていた!? その作品群のすべからく全てが、日本野球の予言の書であった!!

そんな、“描いたことが次々と実現していく驚愕の歴史” を掘り下げた書籍『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社) が発売中です。
 
こちらの本は昨年、伊藤 蘭さんのコンサートレポートを寄稿してくれた “全キャン連” 代表の 石黒謙吾氏がプロデュース&編集を手がけ、『昭和40年男』『昭和50年男』本誌でも活躍中の “文化系スポーツライター” オグマナオト氏が執筆したもの。

そんなご縁もありまして、その内容の一部を当Webサイトで公開することに! 今回は同書の「はじめに」と、『ドカベン』に言及した冒頭の1パートを、この後に続けて転載します。

1972年の連載開始から今年で50周年…『ドカベン』ファンは、ゼヒご一読あれ!
 
 
なお、明日 6月29日 (水) には、東京・六本木で刊行記念トークイベントも開催。
オンライン配信&アーカイブ視聴もアリとのこと。遠方の方、会場に足を運べない方も後から気軽に観ることができるので、気になる方はこちらもゼヒ。詳細はリンク先でチェックを!
 


『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』刊行記念
次々と実現していった驚愕の歴史を検証する
[作品・野球・マンガ]三者三様の視点から
 
日時: 2022年 06月29日 (水) 19時 ~ 20時30分
会場: 文喫 六本木
    (東京都 港区 六本木6-1-20  六本木電気ビルディング 1F)

出演: オグマナオト、菊地選手、ツクイヨシヒサ

チケット:
【会場参加】イベント参加 + 著者サイン付 書籍 セット / 3,000円 (税込)
【会場参加】イベント参加 / 2,000円 (税込)
【オンライン】イベント視聴 + 著者サイン付 書籍 セット / 2,300円 (税込)
【オンライン】イベント視聴 / 1,000円 (税込)

※アーカイブ視聴は配信開始から約1ヶ月可能
 
▼イベント詳細・チケット販売ページ
https://peatix.com/event/3270342
 
 
(「昭和トリオ」 “Web担当A” )
 


 
(※以下、オグマナオト著
 『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』p.002~005 を再構成し掲載 )
 

■はじめに
 水島野球マンガ50年以上の歴史、
 33作に膨大な数の「予言」を見つけて

プロ野球や高校野球を追いかけていると、「このシーン、どこかで見た気が……」というデジャヴのような感覚を味わうことがある。それは往々にして、野球マンガの大家・水島新司が『ドカベン』『あぶさん』などの作品のなかで既に描いていた、という場合が多い。代表例が 2012年 8月13日、夏の甲子園2回戦 済々黌 (熊本) 鳴門 (徳島) の一戦で起きた、通称「ルールブックの盲点の1点」、別名「ドカベンルール」と呼ばれる現象だ。この日、SNSでは「ドカベン」がトレンドワードになり、ネットニュースやスポーツ紙でも「甲子園でドカベン名場面が再現」といった見出しでいくつもの記事になり、大きな話題を集めた。
 
プレーの顛末はこうだ。1点をリードしていた済々黌7回ウラの攻撃。追加点を狙う済々黌は1死一・三塁のチャンス。だが、2番打者の放った鋭い打球は鳴門のショートがダイビングキャッチ。さらに一塁に転送されて走者が戻れずダブルプレーに。鳴門がピンチを脱出した……はずだった。ところが、無得点でチェンジとなるはずが、スコアボードには「1」の表示が灯ったのだ。実は、三塁走者も2番打者のライナーで飛び出していて、一塁走者のアウトより早く本塁に到達。この場合、鳴門はボールを三塁に送って「第3アウトの置き換え」をアピールする必要があったのだ。
 
鳴門ナインも観客も、テレビで見ていたファンの多くもなにが起きたのか瞬時にわからず、ポカンとするほかなかったこのプレー。だが、済々黌の選手たちは「わかって実行したプレー」だったことが試合後にあきらかになる。三塁走者がインタビューで《小学校のとき、このプレーとルールは『ドカベン』で読んで知っていた》《あまり打てない自分たちは頭を使って点を取る必要があり、『ドカベン』をもとに練習していた》と語ったからだ。

少年チャンピオンコミックス『ドカベン』第35巻

『ドカベン』でこのプレーが描かれたのは1978年。山田太郎、岩鬼正美らがいる明訓高校と、同じ神奈川県のライバル・白新高校との試合だ (コミックス35巻文庫版では23巻に収録) 。明訓が1死満塁のチャンスでスクイズを試みるも、これが小飛球となり、飛び出した一塁走者の山田が戻りきれずにアウトに。ただ、三塁走者の岩鬼が3アウトより前に本塁に到達。白新側が「第3アウトの置き換え」をしなかったため、明訓が好投手・不知火からら貴重な1点をもぎとった……という場面だ。『ドカベン』が高校球児の教科書代わりとなり、まるで予言のようにそのプレーが再現されたのだ。

折りしも2012年は、『ドカベン』連載開始40周年のメモリアルイヤーであり、シリーズ最終章『ドリームトーナメント編』が始まった年。歴代水島作品のオールスターキャストが集結しての夢の戦い、と銘打たれたこともあって、当時の私はネット記事を中心に、水島野球マンガの考察記事、レビュー記事を寄稿することが増えていた。そのため、この済々黌のプレーについても「なにかほかとは違う切り口で書けないか?」と依頼を受け、【「ドカベンルール」で話題騒然甲子園、まだまだある水島新司の予言的展開】の見出しで
記事を寄稿。水島野球マンガで描かれたプレーが実際に起きるケースは多いことをいくつかの事例で紹介し、その「予言」が実現した背景には、水島新司の深い野球洞察があるからだ、とまとめた。ありがたいことに、この記事は Yahoo! ニュースにも転載されて大きな反響を呼び、これがきっかけとなってラジオ番組や雑誌などからも、「水島予言」をもっと紹介してほしい、といった依頼を何度も受けることとなった。
 
本書はそんな「水島予言」をあらためて洗い出し、実際のプロ野球、高校野球の世界とどのようなリンクをしてきたか、どんな影響を与えてきたのかを考察する一冊だ。現実世界で起きた実際のプレーを時系列で紹介していき、水島作品のどの場面でそれが予言的に描かれたかを検証。さらにその創作背景も探っていく。
 
ここでの「予言」とは、敬遠球を強引に打って「岩鬼正美のような悪球打ち」と話題になったり、アッパースイングをする打者に対して「坂田三吉の通天閣打法みたい」といった表現で紹介されたりすることではない。もっと試合展開の妙、数年に一度あるかないかの珍しい現象がそっくりそのまま、驚くほどの精度で水島作品が先に描写していた、というケースに絞っている。それでも、過去33作、50年以上の水島野球マンガの歴史を振り返った結果、膨大な数の「予言」を見つけることができた。
 
また、予言とは別に、プロ野球や高校野球で生まれた伝説のプレーが後年、形を変えて水島作品で新たな物語として描かれ、人々の記憶を呼び起こすこともある。それらは、「時代とシンクロした水島マンガ」と題した項目としてまとめている。
 
本書を制作中の 2022年 1月、「水島新司逝去」のニュースが流れ、プロ野球選手を含む多くの野球人が、幼少期に触れた水島作品の偉大さについて語っていた。なぜ、水島野球マンガがこれほどまでに多くの支持を集めたのか。日本野球の歴史的な流れとともに見ていくことで、その考察にもつながるはずだと考えている。
 
 
(次ページへ続く→
 ■【水島予言】1973・『ドカベン』明訓高校編へ。最強打者への道、始動 ~ [2/2] )

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