アメリカで、アナログ盤の売り上げがCDを抜いたというニュースを聞いた。1986年以来となるとのことだ。国内でもソニーがレコード生産を復活させたなんて話が出たのは、もうかれこれ4年前のことだ。そもそもCDを最初に発売したメーカーだし、デジタルミュージックを引っ張り続けたソニーが、巡り巡って他のレーベルに先駆けてアナログ盤の生産を再開したというのはおもしろい。そしてそこに若者が入ってきているのも、志向の多様化なのだろう。コメントには “音楽を大切に聴きたい” なんてのがあって、おっさんはうれしいばかりだ。
先週末に長野のSBC信越放送のイベントに出演した流れで、そのままラジオの生放送でもくっちゃべった。もちろん『昭和40年男』の編集長という立場だ。台本なしのぶっつけ放送のラストクエスチョンは、昭和の魅力とはだった。一瞬の躊躇もなく僕は「アナログです」と答えた。
人間の歴史においていくつも経験してきた革命の中で、もっとも大きなのはデジタルと核の技術だと僕は思っている。これからもデジタル技術はますますの加速度的な発展を見せていくだろう。これは人類の生き方レベルで変化をもたらすし、すでにもたらしてきた。ほとんどが恩恵と言える。これを大前提にして言うが、あちらこちらで乾きが生じてしまったのは否めない。人の関係にも、生活の中でも感じているはずだ。アナログ技術の沸点の中で多感な10代を過ごした我々世代はなおさらである。
アナログ技術の沸点としたのは、アナログ盤で考えるとわかりやすい。俺たちが10代の頃のハードがまさしく沸点ということだ。テープに録音することも含めたアナログ技術に、俺たちは、特に男子は目をキラキラさせながら、次々と繰り出される新機軸を楽しんだのである。現在のサブスクの恩恵はおっさんにとっても素晴らしい。まさしくデジタルによる革命である。が、昭和のアナログの不便さの中にあるぬくもりを俺たちは熟知しているからレコードで音楽を聴きたくなるし、その代替えとなるCDというパッケージも好きなのだ。
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我が家の居間の壁はこんな感じで、これ以外にもたくさんのアナログ盤とCDを飾っている。中央のライトニング・ホプキンスの『モジョ・ハンド』は、僕にとって “アナログ盤” のベストアルバムであり、壁の中心に鎮座している。この作品はCDも所有していて気軽に聴きたい時はそれを、本気で聴きたい時は針を落とすという贅沢を味わっている。これを現代の若者たちも楽しんでいるのかと思うと痛快であり、わりと多くが昭和カルチャーに興味を持っているというのもあたり前田のクラッカーである。我が社が誇る “昭和トリオ” は、もっともっと売れちゃうかもしれないなあ (笑) 。