アメリカのロック専門誌、ローリングストーンが2008年に発表した“史上最も偉大なシンガー100人”なるランキングを見つけてしまい、〆切の瀬戸際にいるにもかかわらず盛り上がっている。発表時になんで見逃したのだろうかと思いつつ、このタイミングで出会ってこれほど楽しんでいるのだからよしとしよう。今日の時点でこのランキングに私見をぶつけている人間は、地球上に僕だけかもしれない、ある意味快感だね。さあ、いよいよ30位から、いってみよう!!
おーっ、プリンスの30位はがんばったねえ。ボノより上とはいい度胸しとる。そして28位にはジャニスじゃないの、パチパチ。マイランキング女性ロックシンガーナンバー1は文句なしにジャニスだ。2位以降は甲乙付けられずにひしめき合っているけど、トップだけは抜けてこの人しか考えられない。もう何十年も変わらずだから、このまま棺桶に入るまでジャニスを抜くシンガーは出て来ないのかもしれない。もっとも自分自身が聴いていた時期や、知り得た情報の中での影響とか、もっと言えば好みが大きいわけで、人によってはジャニス以上のシンガーはボコボコ存在するのだろう。事実、ここのランキングもこんなに低いもの。僕はもしもジャニスの歌を知らなかったらと考えるとぞっとするほど愛してます。あっ、歌だからね。
ここら辺の上位にくると、団塊のおじ樣方やもっと上の洒落た爺さんなんかが愛したであろう方が、次々ランクインしている。ふむふむ、偉大な“ロック”シンガーのランキングでないからな。好んで聴いたシンガーよりも伝統的な歌手が多くいるところに、25位がマイケル・ジャクソン、24位はヴアン・モリソン、23位にデビット・ポウイと、興奮が立て続けに来たよ。
実はマイケルにはあまり夢中になったことがなくて、きれいな花束を見ている感覚で聴いた人だ。ダンスも同様で、完璧すぎるからだろうな。観賞用ダンスミュージックとして、感心することはあっても熱くはならなかった。ところが、映画館のでっかいスクリーンで『ディス・イズ・イット』を観て、きれいな花にはものすごく苦労して土が盛ってあることを知らされた。天才だけど生身の人間であることを確認できて、その上で花にまで昇華できた人だったことに、あたり前だけど気が付かせてくれた。マイケルに初めて目頭が熱くなった、バカな俺です。
ヴァン・モリソンもやはり高いところにいるねえ。僕はこの人もザ・バンドの『ラストワルツ』で仕入れた。あのフィルムがどんだけ僕の音楽ライフを広げてくれたのかと、ここまでで3人ものシンガーが経由してきているのは凄い。感謝ですな。
ボウイもいいところにいる。お恥ずかしい話だが、聴き始めたキッカケは『レッツ・ダンス』です。あのアルバム冒頭の『モダン・ラブ』に惚れてしまい、それまでなぜか避けていたグラム・ロックへと入っていったのだ。化粧がなんだか古くさいものに感じてならなかったのと、当時の僕にはナヨナヨがちょっと苦手だった。ある日、スティービー・レイボーンと演っているフィルムを観たときにビビッと来て、そのちょっと前に流行っていたのが『レッツ・ダンス』だったから持ってるヤツに借りてきた。針を落とすといきなり『モダン・ラブ』で、カッチョええのおと、スムーズな流れで吸い込まれた。惚れれば当然古いのをあさる。たどり着いてしまった『スペース・オディティ』とか『ジギー・スター・ダスト』なんかを聴いたときは、自分の浅はかさを知った気がした。芋づる式で、それまで敬遠していたマーク・ボランにまで手を延ばしたのは言うまでもないことか。変化しなければボーイじゃないと言いたげなほどの変身ぶりを、さかのぼりながら感じたのは、ずいぶんいい勉強になった。(続く)