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■70分の映画に30分の長すぎるネタ見せ!? そこに監督の想いが。
ちなみに、河崎監督と町さんの出会いのきっかけは、“昭和トリオ” にも何かと資料提供でご協力いただき、『昭和50年男』本誌に「帰ってきた8cm CD」を連載中の、タメ年男なアーカイヴァ―・鈴木啓之氏にあるんだそうです。鈴木さんからの「面白い人がいる」という紹介で “昭和好き” として意気投合、2018年に公開された『シャノワールの復讐』のワンシーンで歌ってもらって以来のお付き合いなんだとか。
鈴木さんは今回の『タヌキ社長』にも出演。ロマンポルシェの掟ポルシェさん演じる、悪徳ライバル会社「浪漫酒造」社長の宴会必殺芸を喰らい、あわれ餌食となる社員役で登場するので、“昭和トリオ” 読者の方はご注目を…。
てなワケで、だいぶロングめなWインタビュー、まだまだ続きます!
― 掟さんの、普段のロン毛にサンバイザー&セーラーズのイメージとは全然印象の違うスーツ姿からの、DJでお約束なパフォーマンスもスゴかったんですけど (笑) 、ショウショウ、レインボーとお笑いコンビも出演して、漫才やコントのネタをまるまる披露してくれてますよね。タヌキ社長も宴会芸の “キンタマすくい” を見せてくれましたが (笑) 。
河: 70分の映画なのに、ネタ見せが30分ぐらいあって、やたら長い!っていうね。まぁ、呑みの席でとか、ストーリーの流れには沿った形にしましたけど。
― あぁ、一応そうなってましたね。…って、一応なんて言っちゃダメですね (笑) 。
河: ふつう、映画監督はどう削るかで苦労するのに、僕はどう伸ばすかで苦労してるっていう、世にも珍しい話でね。観客はそういうくだらない映画をえんえん見せられるわけです。家でDVDとかなら飛ばしたりもできるけど、映画館でじっと見せられるとなると、これはもう拷問ですよ!
― 監督自ら、くだらない映画なんて言っちゃって大丈夫ですか!? (笑)
町: いやいや、そんなことないですよ! ちゃんと楽しい映画ですから!(笑)
河: いや~、くだらない、何も考えてないバカ映画っていうのは僕のポリシーだからね。でも、ネタ見せのシーンを入れてるのには理由もあって。社長シリーズにも、森繁と、三木のり平、小林桂樹の芸のシーンが入ってるんですよ。昔、まだ家にテレビがなかった頃は、映画が最大の娯楽ですからね。映画の中で人気芸人や人気歌手のステージが疑似体験できた。それで今回、町さんの歌もまるまる入れてるしね。
町: そうですね。BARBEEBOYSのいまみちともたかさんに作っていただいた主題歌の「恋人にもうみえない」と、全曲英詞の「Am I a bit strange ?」、それと、エンディングでは、こころちゃんと一緒にやってるユニット・ぼんぼん花ーーー火の「ポンポコポン (お月様の下で) 」と… 3曲もまるまる歌わせていただきました。
― なるほど… 昔は一本の映画にバラエティショー的な要素があったと。『タヌキ社長』でのネタ見せや町さんの歌も、そういう時代の映画へのオマージュというわけですね。
河: それに、映画なら未来までちゃんと残りますからね。小林信彦が、クレージーキャッツも全盛期はライブの方が面白かった、って書いてたんだけど、それは僕も見られなかったですからね。映画で記録されているおかげで楽しめる。だから、僕の好きな人たちの芸を世界遺産のように遺したい!という想いもあるんですよ。
― おぉ、なんだかまた急に深い話になりましたね… (笑) 。確かに、YouTubeで良くも悪くも昔の貴重な映像が気軽に観られるようになりましたが、いつ消えちゃうかわかりませんし。映画という形になれば、河崎監督の2022年公開作品として、映画史というシステムに刻まれますもんね。
河: 僕は怪獣モノを撮ってきてるから、なおさらね。今も昔も、恋愛映画とかってたくさん作られてますけど、何十年も経つとほとんどは忘れられちゃうでしょ? でも、怪獣とか特撮ってジャンルには、マニアがたくさんいるから、ずっと残る。ゴジラもウルトラマンも今でこそ名作ってことになってるけど、昭和50年代の頃までは、映画の世界じゃ屁みたいな扱いだったんですよ。でも結局、そういう作品の方がずっと残って、続いてる。僕の映画でさえ、海外にも熱心なマニアがいたりしますからね。
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