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おはこんばんちはです。「S40ニュース!」…の拡大版?的にお送りします。
昨日、2021年 4月12日 (火) から、ついに本丸の解体工事が始まった、故・黒川紀章氏設計の「中銀カプセルタワービル」。建築好きなら知らない人はいない、高度経済成長期の昭和日本で生まれた建築運動「メタボリズム」を代表する名建築です。
『昭和40年男』本誌vol.61『俺たちが愛した東京』特集の「昭和の渋いビル」にもちょこっと登場していたんですが、覚えている読者の方もいらっしゃるでしょうか?
テレビのニュースでも “銀座のカプセルビルがついに解体” などと報じられ、昨日のビル周辺にはメディアの取材陣の他、今の姿はこれで見納めかも…と別れを惜しんでカメラを向ける人々もたくさん集まっていました。
「メタボリズム」と聞くと、もはや完全なる中高年の “昭和トリオ” 世代はつい生活習慣病的なシンドロームか?と思っちゃいそうなんですが、その意味するところは “新陳代謝” 。
メタボリズムグループに参加した、黒川氏ら若手建築家たちは、社会の発展や人口の増加に合わせて有機的に成長する未来志向の都市計画や建築を次々に提案。“建築のオリンピック” とも言われた EXPO ’70 大阪万博ではその集大成とも言える活躍を見せ、菊竹清訓氏が設計した空中都市のモデル建築としてのシンボルタワー「エキスポタワー」をはじめ、黒川氏も「タカラビューティリオン」「東芝IHI館」などユニット構造のパビリオンを手掛けました。
そして、会期中のみの仮設建築で実験的な存在だった万博のパビリオンに対し、実際に人が住めるメタボリズム建築として結実したのが、黒川氏の設計で昭和47年=1972年に竣工した「中銀カプセルタワービル」(当時は「中銀カプセルマンシオン」とも呼称) だったのです。
中銀カプセルタワービル (以下、“カプセルタワー” ) は、幹となる2本のタワーに、全て同サイズの直方体のカプセルが140個取り付けられた構造となっています。円形の窓も特徴的なカプセルは、ベッドやシャワールームが備えられたコンパクトなワンルーム空間で、テレビやオープンリールデッキもビルトイン。新橋駅にも近い都心のセカンドハウスとして、通勤ラッシュに苦しむビジネスマンにとっては憧れの存在だったとか。
各カプセルは取り外し式となっており、設備が古くなればまるごと交換が可能… そうして交換しながらの存続を想定した、まさに “新陳代謝” を体現する建築でした。
同様のカプセル建築の構想は、海外の建築グループ「アーキグラム」などによっても提案されていましたが具現化した例は少なく、中銀カプセルタワービルは近代建築史に輝くユニークなモダニズム建築として、世界でも認められた存在だったのです。
しかし21世紀に入る頃には老朽化が進み、アスベスト問題などもあって、取り壊しの話が持ち上がってきます。カプセルタワーを愛し、守りたい人たちがカプセルを購入してオーナーとなり、「中銀カプセルタワービル 保存・再生プロジェクト」による見学者ツアーなどの保存活動も展開されてきたのですが、残念ながらついに解体が決定…。
当初想定されていたカプセルの交換が行われることなく、’72年の竣工から50周年を迎えた今年、まさに記念すべき年に、いよいよ解体工事が始まることとなったのです。
■カプセルタワー解体を見つめる最前線! 元カプセル住人の “アジト” に潜入!?
さて、ついついカタいトーンのまま前置きが長くなってしまいましたが、今回の記事タイトル的にはココからが本題でして…。
先日、こちらのニュースでも、保存・再生プロジェクト編『中銀カプセルタワービル 最後の記録』(草思社) の出版記念トークイベントを紹介したんですが、黒川紀章氏のご子息で、タメ年昭和40年男だという黒川未来夫氏と、プロジェクトの代表・前田達之氏がご出演ということで、大阪万博好きでメタボリスム好きな不肖ミーハーの筆者も拝見してきました。
件の書籍は、カプセルタワーの全140カプセルのうち114カプセルの写真を掲載した、まさに決定版と言うべき貴重な記録。竣工当初は基本的に同じ装備だったカプセルの内部は、半世紀の年月を経てカスタマイズされ、リノベーションされ、それぞれに住人のカラーを反映した、個性豊かな空間となっていました。
それを受けて、トークイベントにも今回の本にカプセル内部の写真が掲載された元住人の方たちが登場。実際どんな風に中銀カプセルライフを満喫していたかプレゼンしてくれました。
そんな元カプセル住人の一人が、今回取材に応じてくれた、コスプレDJの “声” さん。DJセットをはじめ、綾波レイの等身大フィギュアなど大好きなガジェットアレコレを持ち込んで趣味全開の空間を作り上げた彼女は、カプセル内からのDJプレイをツイキャス配信。解体に備えて今年1月に全住人が退去となるまで続けていたとか。
しかし、退去してもなお、愛すべきカプセルタワーの行く末を見届けたい! というカプセルラブ過激派の彼女は、なんとお隣のマンションの一室をジャック! というか、元住人の方たち数人と一緒に借りたってことなんですが、とにかく、解体の様子を間近で観察できる “アジト” を構えたというワケです。
いつかはカプセル暮らししてみたいなァ…と思いつつも、ビンボーヒマナシでついぞかなわなかった筆者としては、その中銀カプセル愛と行動力に脱帽! 自分もせめてカプセルタワーの “終わりの始まり” を見届けたい! と思いまして、声さんへの取材をオファーしたのでした。
かくして、解体の最前線 (!?) たる秘密アジトへテテンとチン入! ってなノリで、中銀カプセルタワービルの “誕生日” とされている竣工日の4月5日… その直前にお邪魔してきましたよ~。
で、アジトなお部屋に足を踏み入れるや…
いきなりカプセルがドドン!
もう普通に、カプセルタワーが部屋の窓から見えてるんですね~。
…って、そりゃ~すぐお隣なんだから当たり前なんですが、なんだか感動!
出迎えてくれた声さんは、「中銀カプセルマンシオン」「メタボリズム」「新陳代謝」などの刺繍もまぶしい、気合入りまくりの特攻服姿。前出のトークイベントでも着用されてましたが、カプセルツイキャス配信ではトレードマークとなっている衣装です。
そしてさらに、ドドーン!!
ベランダに出れば、カプセルタワーがなお間近、視界いっぱいに…
ってこれまた当たり前なんですけど、もう大迫力!! って感じです。
もちろん解体工事の様子も、細かな作業までバッチリ観察できてしまうワケです。
アジト取材の時点では、カプセルタワー本体の解体工事はまだ始まっていませんでしたが、その奥にあった中銀本社の取り壊しはほぼ終わり、最後の仕上げ段階といったところ。いよいよこれから本丸に手がかかるのか…という感じで、なんともさびしく思ったのでした。
(次ページへ続く → ■尽きぬカプセルタワー愛… その原点にはスペル星人がいた!? [2/2] )