“日本最高峰” からのアドバイスで作り続けたポテトサラダ。
塩と酢で下味を付けるのが、なんといっても大切なのだ。
東京・麻生のおしゃれスポットに、人情たっぷりのシェフがいるという。姓は平野、名は貴之、人呼んで “ お料理寅さん” とは、この男のことだ。
平野には、こんな思い出がある。高校を卒業し、飛び込んだ東京・四谷の西洋料理店での見習いとして働くなか、平野は社長に命じられ、おつかいに行くことになった。向かう先は帝国ホテル。誰もが知る日本最高峰のホテルだ。どうやら社長は旅行をとおして総料理長の村上信夫氏と知り合いになったらしく、挨拶をしてこいと言う。村上信夫といえば日本にフランス料理を広めた重鎮。うず高いコック帽がトレードマークの、テレビ出演もしている有名人だ。
社長の命により手土産持参で訪れた若き平野を村上は歓迎し、気前よく調理場に招き入れ、中を案内してくれた。そこで目にしたのは、広い厨房でてきぱきと働く、おそらく自分とあまり変わらない年頃の若い見習いたち…。自分が勤める店の調理場と違いすぎる空気感、統制が取れた集団に平野は圧倒された。
村上がふと調理中のポテサラが入った大きなバットを指差し、平野にこう言った。
「平野君、いいかい? 茹でたジャガイモは塩と酢で下味を付けるとおいしくなるんだよ」
日本最高峰からの教えを知って以来、まかないでポテトサラダをつくる時、平野は必ず塩と酢の下味を欠かさないようになった。今回のレシピでは適量と記したが、実はこの塩と酢の塩梅はとても難しい。
「ほんのちょっと下味を付けると、ポテサラはグーンとうまくなるんだ。確かにうまくなるんだけど、酸っぱすぎたり、しょっぱすぎたりすると、後から入れるマヨネーズの味が死んじゃうから塩梅は難しいんだよ。料理って奥深いし、おもしろいね」
コクのあるマヨネーズ、あっさりとした野菜をまとめるのは、ジャガイモの下味にもかかっている。“塩梅” が人との調和にも似ていると気づいたお料理寅さんであった…。
調理の工程は簡単で、ちょっとした気配りでおいしく出来上がる、平野のポテサラを読者の皆さんだけにお届けしよう。
(『昭和40年男』本誌 2021年4月号/vol.72 掲載
「お料理寅さん」第5回 「大人のポテトサラダ」〜下味の塩梅を知る〜 より 再編集 )
▼調理動画はコチラ!
■平野流ポテトサラダとは?
手づくりのアンチョビマヨネーズを利かせ、お酒も似合う味に。男が率先して作りたい一皿だ。華やかな味と見栄えを支えているのは、実は、塩と酢を適量ふった下味にあり。そこを軸に作り続けたポテサラのさらなる進化版を今回披露していただいた!
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■調理工程
- 鍋に水と少量の塩 (分量外) とジャガイモを入れ、中火にかける。ポコポコと沸いてきたら弱火にして、中に火が通るまで約30分かけてゆっくり茹でる。タマネギ、ニンジン、キュウリはせん切りにする。
- ジャガイモを茹でている間に、アンチョビマヨネーズをつくる。ボウルに卵黄、マスタード、白ワインビネガー、アンチョビペーストを入れてホイッパーで混ぜる。そこにオリーブオイルとサラダオイルを少しずつ加えながらホイッパーでしっかり攪拌し、乳化させる。
- タマネギ、ニンジン、キュウリを塩もみする。塩を少量 (分量外) 加えて数分置き、しんなりしたら水をよく切っておく。
- ジャガイモが茹で上がったら熱いうちに皮をむき、木ベラで潰しながら 塩と酢で軽く下味を付け、冷ます。冷めたらアンチョビマヨネーズを適量加えてよく混ぜ (3) を加える。皿に盛り、黒こしょうをかけ、葉物野菜やトマト、一口大に切った明太子を添える。
■お料理寅さん流 調理工程
①ジャガイモは水から茹でる
②弱火にするタイミングを見逃すな
③油を少しずつ加えながら攪拌
④乳化させる
⑤野菜を塩もみ
⑥ジャガイモに下味を付ける
⑦野菜を合わせる
■調理のコツを教えよう!!
メインのジャガイモに手づくりマヨネーズのコクと野菜のフレッシュさが三位一体になったサラダは、主菜の脇役ではなく酒のアテとして十分主役を張れるおいしい一品となる。
「主役のジャガイモは水から茹でるのがポイント。こうするとイモのうまみが逃げないんだ。よくイモの種類はホクホクとした男爵がいいというけれど、冷やして食べるポテサラはどんな種類でもいい。今回は、皮がむきやすいメークインを使っているけど、最近はおいしい品種も多いから好きなイモを選んでつくってほしいね」
今回の味付けのポイントとなる手づくりマヨネーズは、アンチョビペーストがおいしさのカギとなる。アンチョビペーストは、最近ではスーパーでも手軽に買える調味料のひとつ。卵黄にアンチョビペーストなどの調味料を加えたら油を少しずつ加え、攪拌 (かくはん) しながら乳化させよう。ここでしっかり乳化させないと時間と共に分離してしまうので注意が必要だ。
ジャガイモが茹で上がったら熱いうちに皮をむき、食感が残る程度につぶす。少し冷ましたら、そこにできたてのマヨネーズと塩もみした野菜を加えて混ぜる。今回、加える具材は、定番のハムは入れず、野菜だけという潔さがいい。パンチのあるアンチョビマヨネーズがコクを担保してくれるので、野菜だけでも十分満足感が出る。むしろ野菜だけなので口当たりがさっぱりして、大人の俺たちの口にぴったりだ。付け合わせの明太子と一緒に食べれば、否が応でも、ご飯も酒も進んでしまう。
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取材・文: 平川 恵 撮影: 尾形隆夫
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