プロデューサーは1975年生まれの昭和50年男。
時にうずもれた “昭和グッズ” 再生番組、そこに込められた想いとは?
『春風亭昇太の昭和再生ファクトリー』は、愛着があるゆえに壊れても捨てることができず家庭で眠っている “昭和グッズ” を、往時の状態に再生させることに挑む様子を追いかけるバラエティ番組だ。この番組の製作の経緯と見どころを、プロデューサー・築地 健氏に聞いた。
(取材・文:『昭和50年男』編集長 金丸公貴)
壊れて動かなくなった思い出深い品を所有者から預かり、業者や職人が再生に挑む様子を追いかける『春風亭昇太の昭和再生ファクトリー』(以下『昭和再生ファクトリー』) 。本番組を企画したプロデューサー・築地 健氏は、昭和50年男である。ご自身もさぞかしモノへのこだわりが強いと察せられるのだが…。
「実は、モノにこだわりはありません。ただ、衣服ではちょっとヨゴレやキズがある古着、クルマならアンティークなものを好むように、歴史が感じられるものに趣味・嗜好の目が向いてはいましたね。マンガなら『あしたのジョー』が好きで、深夜に放送されたアニメを録画したり、豪華本を買い集めたり…。大学の頃の携帯電話のメアドは “ashitanojo-” に設定していました」
■PROFILE: 築地 健/つきじたけし 昭和50年、広島県生まれ。BS12を運営するワールド・ハイビジョン・チャンネルにて、『昭和再生ファクトリー』の他、『ケンドーコバヤシの 社長! お手伝いさせて頂きます!』『久住昌之のニッポン箸休めさんぽ』などのプロデューサーを務める。 |
「モノへのこだわりは淡白」と言いつつも、しっかりとした一家言をもっている築地氏。では『昭和再生ファクトリー』の着想のきっかけは何だったのだろう?
「2021年の8月頃に、社内で新番組の企画募集があり、40~50代以上に向けた “昭和の時代を生き抜いたモノ”、“昭和にこだわりのある人”、“ものづくりの大切さ”、これらをかけ合わせた番組を提案しました。『大きな古時計』という曲がありますよね。お爺さんと生涯を共にしてきた時計が動かなくなるという少し悲しい歌です。でも、孫の代にその時計を修理して動くようになったら、お爺さんもよみがえった気になれるかもしれない…、そんな連想から企画がまとまりました」
20~30案の応募があったが、築地氏の企画は賛同を集め番組製作へ動き出す。まずはTwitterで修理の対象となる “昭和グッズ” 探しに着手した。
「バイクやクルマって、おそらく人生で初めて買う高価なものだから思い入れがあり、捨てられないだろう。そして、スマホがない昔は今より記録を残すのは難しいから、再生機器はなくしてもフィルムやカセットテープは残しているはず。この二つの考えから、クルマとフィルムに的を絞りました」
そうして集めた情報の中から、所有者にコンタクトして番組への協力を相談。最終的に本田技研工業の「HONDA MTX50R」という原付バイクと、8mmフィルムの2品が番組で修理するモノに決まった。
■取り戻したいのは “モノ” ではなく “あの時代”
今回の再生依頼主となるのは、バイクの所有者である山中さんと、8mmフィルムの持ち主の康子さん・和恵さん母子。山中さんは大学生だった約30年前に「HONDA MTX50R」を購入し、11年近く駆っていた。一方、8mmフィルムは、康子さんの父親が40年以上前に撮影したものなど全5本。
そして、修繕に挑むのは、60年以上もバイクとクルマを修理し続け「直せないバイクはない」と豪語するベテラン職人と、最新の技術でカセットテープやビデオテープなどあらゆるフィルムを元の状態に近い色調修復再生を行うフィルム業者。奇しくも、昭和と令和のエキスパートが並び立った。
所有者から “宝物” を預り両者に受け渡してから2〜3週間後、『昭和再生ファクトリー』スタッフのもとに姿を変えて戻って来た。返却の際、バイク職人は「結構難しかった…」との言葉を添えてきたが、その成果は果たして――。
「直せるかどうかは、実際にやってみないとわかりません。でも、全部が直らなくてもいいと思っています。一生懸命取り組んだ結果、たとえば、エンジンが少しかかるくらいでも…。そして、何かがよみがえってくれたら。この番組がよみがえらせたいのは、“モノ” よりも “あの時代” なんです」(築地氏)
昭和と平成初期に青春を過ごした世代にとって、現代の情勢の変化は目まぐるしく、そして、激しい。なかには生きづらいと感じている人もいるだろう。それを認めつつも築地氏はこう語る。
「令和になり、昭和の価値観は現代とちょっとズレているという意見も耳にします。とは言え、昭和で教わったことが自分の肥やしになっていることも事実。古いものは忘れ去られる過去ではなく、よき遺産となる部分もあることをこの番組で感じてほしい」
今は手の施しようがないモノであっても、30年くらい後の未来には再生できるようになるかもしれない…。『昭和再生ファクトリー』を観るとそんな気にさせてくれる。
「私はもともと物を捨てられない性格なのですが、ますます捨てられなくなりそうです。断捨離ブームなのにね」
築地氏は笑いながらそう言った。
『春風亭昇太の昭和再生ファクトリー』(BS12 トゥエルビ)
放送日時: 2022年 3月23日 (水) 21時~ 無料放送
番組URL: https://www.twellv.co.jp/program/variety/showa-factory/
【出演者 PROFILE】
春風亭昇太/しゅんぷうていしょうた
昭和34年、静岡県生まれ。新作、古典問わず高い評価を得ている実力派真打。役者としても活躍している。落語芸術協会会長。
阪田マリン/さかたまりん
平成12 (2000) 年、大阪生まれ。昭和と現代の流行を織り交ぜた、新しいスタイルを「ネオ昭和」と名付けてSNSやラジオで独自に発信している。
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高校卒業後初めて買った車昭和56年のスカイラインです、
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