雑誌作りを仕事として始めた頃、もっとも参考にしたのが何を隠そう『anan』だ。特集の広げ方というか範囲というか「おっ、その展開さすがっ」と唸らされることばかりで、今も変わらずお世話になっている。展開を支えるタイトルの付け方やデザイン、もちろん丁寧に綴られた本文などなど、♪僕の先生は〜アンアン♪と北野広大のテーマ曲にのっけたりして。他にも女性誌は参考になる作りのものが多く、僕は人目もはばからず女性誌コーナーで物色したりする。きったねえおっさんがこのコーナーに長居するのは書店さんにとってはさぞご迷惑だろうが、そのエネルギーで書店さんに少しでも役立つ本作りを目指しているのだから許してちょんまげ。
つい先日、都内某大型書店でご覧の棚を見つけた。『昭和45年女・1970年女』創刊以来の願いは、僕にとっての教科書である『anan』様と並ぶことだった。が、その陳列を見られぬまま4冊を発行した。売ってくださっているのだから文句は言えないが、自分のところの発行ながら昭和トリオ揃い踏みで並べているところが目につく。「おうっ、まいっ、がっ」な気分になり心が叫ぶ。「女性誌なんだよー」と。だがついにこの棚に巡り合わせてくれたのだ。しかもこの書店さんの激しい『anan』推しの中で、燦然と輝いているじゃないか。“にゃんこLOVE” の特集だからこの場所を勝ち取ったのかも知れないが、どんな理由でもよい。夢が叶ったのである。
『昭和45年女・1970年女』を創刊させたのが去年の5月のことだった。本当は3月に出すつもりで動いていたが、悩みの上に悩みが積み重なり、2ヶ月遅れになった。『昭和50年男』を出すのとは悩み方が異なる。ちょうど10周年で出したわけだから、創刊時を思い出せばよい。もちろん10年の社会変化は大きいわけで壁はあった。一番の差異は昭和50年世代はデジタルネイティブであることだ。ファミコンがガキの頃からあり、パソコンだってインターネットだって肌感覚で接している。この大きな壁と立ち向かったわけだが、アナログもガツンと愛している世代である。双方の良さを知っている世代であり、なんてったってターゲットは同性だ。比べると『昭和45年女・1970年女』は、歳の差こそ5つも近づいているが、性の違いってのはとてつもなく大きい。だが少なからず、『anan』を教科書にしていたことは幸いした。
さて、冷静になって眺めてみるとにゃんこと対になっていることが、この陳列では全くわからん。かわいいモコゾウが隠れていて、パッと見て犬特集だとはわからない。うーむ。だがともかく、念願かなってここにいることをよしとして、しばし遠くからこのコーナーの動向を眺めていたのだが、手に取ってくれた女子は一人もいなかったのさ。念願叶った記念日は、うれしさとハートブレイクが同居したのだった。