去年の暮れから、電車内や駅でこのポスターをよく見かける。ご覧のとおり、酔って電車で暴れるやつを仮面ライダーが…、もとい藤岡さんが戒めているのである。それにしてもプロとは言えここまでの表情を見せられるのは、作っているだけでなくそれ以上に彼から滲み出ているのだろう。『昭和40年男』が10周年を記念して組んだ特集『還暦上等』の表紙もものすごいからご参照あれ。そして、この特集でのインタビュー記事が現在発売中の『昭和40年男 総集編』にも掲載されているので、10周年で買い損ねた方々は今がチャンスである。
この総集編を作ってつくづく思わされた。というか、常々思っていることで、男の顔ってのは苦労や困難を克服した経験、そして努力が如実に出る。人生を楽しむことも、もちろんいい顔作りには大切だ。前述した総集編に並んだ顔たちはまるで芸術と感じるほどの、そう作品である。人は自分の顔を作りながら生き、それを残酷なことにさらさなければならない。努力不足の自分の顔はやはりそれなりだもの (泣) 。
話はちょっぴり脱線ゲームだが、若い頃居酒屋の兄ちゃんだった僕は、藤岡さんのこのポスターの意味がよくわかる。おそらく今以上に、かつての酔っ払いは凶暴だった。あの頃は若いやつらが「イッキイッキ」でガンガン呑んでいたからなおさらだ。客同士、そして働いている従業員に仕掛けてきては殴り合いが始まるのを、嫌ってほど見させられた。学祭シーズンだと大学生同士の対抗戦のごとくメチャメチャなバトルもあったし、中高年も血気盛んだったから若いのに果敢に立ち向かい玉砕なんてのもちょくちょく見た。200人収容のデカバコだったから、勃発頻度は当然ながら高くなり、その度に酒の悪い部分を見続けた。なんて、まるで優等生のように書いているがお前はどうだったのだと突っ込まれたら、ヘラヘラ笑ってごまかすしかない。
逆に、いい酒をいい仲間と呑み交わすことは人生の宝だし、当然ながら顔作りにはいい作用が生じることを信じている。尊敬する先輩から説教されながら呑む酒が大好きだ。笑い合える仲間と腹を割って話すことや、悩みを舐め合うような席でもうまいし、きっと顔につながるはずだ。年が明けて楽しみなのが、大手づとめのタメ年男が退職を決心したなんて話を聞きつけ、その船出を祝って初めて盃を交わすことになっている。これもきっといい時間になるだろう。このポスターをいいようにとらえれば、そのまんま「酔った自分も自分じゃないのかい。」であり、そのとおりなのだ。その自分をさらけ出していい時間にできるのが、本物の呑んべえだ。と、酒好きを正当化している卑しい僕でーす。