巳年はしつこいのである。週明けの今日も大編集後記である。最新号 (vol.70) のご紹介も第1特集から第2特集へと動こう。昭和のある一年をフォーカスしてお送りする連載特集の『夢、あふれていた俺たちの時代』は 昭和61年 でお送りしている。毎度担当が考え抜いて決定させる「こころのベストテン」はご覧のとおりだ。
21歳になる年でいよいよバブル絶頂である。が、その割には重いのがワンツーとなり、キラキラ感がやや薄いものの確かにこのワンツーだろうとうなずける。4位のたけしさんも手伝ってさらに重さを感じさせる。そんな中にあって6位のDCブランドと9位の『男女7人夏物語』がバブル感を演出してくれていて、ダイアナ妃の来日も喧騒を思い出すとキラキラ感がありますな。
が、僕のこの頃はキラキラとは縁遠くて、DCもドラマのような恋も縁遠く、さらにこの頃はトレンディなスポットが次々にオープンしたものの、寄り付けないダサいヤツだった。まるで紀ちゃんが放った名台詞、矢吹くんは寂しくないの? 同じ年頃の若者が青春を謳歌しているというのに、薄暗いスタジオにこもって的な暮らしだった。たまに明るいところに出たかと思えば、タバコの煙の立ち込めたライブハウスのステージ…と、まるであのセリフが当てはまる (笑) 。でも自分の中ではキラキラとロックしていたのさっ。
そんなミュージシャン時代の僕にとって、この年の出来事で強く記憶に残っているのが、14位にランキングした伊豆大島三原山大噴火である。深夜までテレビにしがみついて眺めながら酒を呑んでいた。そこで閃きがあり歌詞にした。この事態でも島を愛しているから離れない、僕と同じ歳の人の心を想像して書き上げたのだ。自分にあったリアルや感情をモチーフにして作るのがそれまでだったが、この時にそうした作家っぽい (!?) 手法で挑んでうまくいったから強く記憶している夜だ。ほぼ一気に書き上げて、ほとんど直しがなかったのも強い記憶だ。とまあ、ほぼ脱線ゲームだな。
バブルは悪とする方が多いが、僕ら世代にとっては恩恵の方が大きいと常々思っている。次々に新しいカルチャーやスペース、遊びが生まれては消えを繰り返したこと。加えて沈まぬ太陽を信じられたこと。当然ながらこれは幻想だったが、ハイティーンから大人へと成長する時期とバブルがシンクロすることは、俺たち世代のスケール感に繋がっているはずだ。前述したような、ゴミみたいな暮らしを送っていても感じられたのだから間違いない。そんな当時の元気を今に生かすために、ぜひ『夢、あふれていた俺たちの時代』をお楽しみあれ~。