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【伊藤 蘭「野音Special!」レポート Part 1 -①】
■1曲目に「春一番」、「HELLO! CANDIES」で “キャンゾーン” 突入!
取材・文: 石黒謙吾
解散から43年が経った2021年の日比谷野音ライブは、僕たちの前に舞い降りてきた身長157センチの “やさしい悪魔” がプレゼントしてくれた、特別な出来事となった。
この9月26日の野音がツアーの追加公演として発表されたのが、ズバリ狙って解散宣言日の7月17日。 そもそも今回のツアータイトルには「Beside you & fun fun ♡ Candies!」と入っていて、それまでよりもキャンディーズ色が濃いめの構成となっているのは、9月20日 (月・祝) の大阪公演に行ってわかっていた。けれどこの日は、その方向性をさらに増幅させて、堂々と真正面からキャンカラーで押してきた。
一昨年の伊藤 蘭さんソロデビューからこの日までの2年と4ヶ月に10回のライブがあった。当然、ソロになった後のアルバム曲から始まって、後半に入りキャンの曲を入れていくステージ構成となっていたのだが、この日は違った。
オープニングでいきなりの「春一番」。これには度肝を抜かれた。コロナ禍で当時から年季の入った「全キャン連式コール」はできないが、コールにシンクロさせたタイミングのペンライトで応援を頑張る。
2曲めからは、今回のツアータイトルともなっている2ndアルバム『Beside you』の収録曲が6曲続く。さらに1stアルバム『My Bouquet』から3曲。その後また2ndに戻って3曲。ここでいったん下がって衣装替え。
コアなファンならテンション爆上がりになったのが次の幕開けだ。登場前にインストで「HELLO! CANDIES」がかかる。これは ’76年夏のアルバム名盤『夏が来た!』のA面1曲目に入っている曲で、3人のユニゾンによるハイキーかつクリアで爽やかな歌声が聴ける。
これをセレクトしたのは、蘭さんご本人じゃないだろうか? なぜなら現在の音楽スタッフでなかなかここまで踏み込んでわかるものではないだろう。そんなことを考えるとなおさら「蘭さん、さすがファンのことおわかりで!」とぞくぞくしてくるのだ。
ソロデビュー発表後のアルバム発売時、銀座・山野楽器でのデビュー&発売記念のトークイベントで、蘭さんは「長い間、ファンでいていただいて、お互いもう親戚みたいなものというか…」と言って笑っていたのだが、ここに僕は大笑いすると同時に、“そう思ってもらえているのか…” と感激でぐぐっと心をつかまれてしまった。
そう、ファン歴48年ともなると、もう単なるファンという感覚ではなくなっている。こちらから一方的に、ではあるが、すでに人生の伴走者なのだから。もしも僕たちと蘭さんがそんな感覚を共有できているとしたら、最高の幸せだ。
「HELLO! CANDIES」からキャンゾーンに入ると、「危い土曜日」「その気にさせないで」「ハートのエースが出てこない」ときて、次がまた驚きの曲。
なんと「ハート泥棒」! これは ’76年秋発売で、とてもいい曲なのにあまりヒットはしなかった。そのためライブでは、たくさんある持ち歌からピックアップされにくく、100ステージ観た僕も、後楽園ファイナル以外では、この曲のお披露目となった10,000人カーニバル「蔵2」ぐらいしか、はっきりと思い出せない (ちなみにこの日は曲名が「ミスターX」となっていた!) 。ライブではかなり貴重な曲だったから、もう血の気がミスターMAX…!
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【伊藤 蘭「野音Special!」レポート Part 1 -②】
■あの頃の紙テープの代わりに… 会場で一斉に揺れたペンライト [4/4] )