昨日のつぶやきに続き、最新号 (vol.69) の連載特集『夢、あふれていた俺たちの時代』の頭のページ、担当編集者が悩みぬいてランキングした「こころのベストテン」の10位にランキングされたKISSについて語ろう。大編集後記とタイトルしたが、よもやま話に近いがお付き合いいただきたい。
俺たち世代の洋楽体験の起点が、女子たちにとってはベイ・シティ・ローラーズで、男子はKISSという方が多いのではなかろうか。その男子たちが初めてKISSに頭をかち割られたのが、この番組『ヤング・ミュージック・ショー』だったという証言をよく聞く。小学6年生の男子たちにとって、わかりやすい地獄の軍団である。サウンドもそれまで体感したことがないハードなものだから、余計に男心を揺さぶられたはずだ。NHKによってKISSがお茶の間に鮮烈なデビューを果たしたのである。放送されたのが昭和52年の5月7日とのことで、直前の武道館公演の内容をパッケージしたそうだ。小6でここに足を運ぶのはハードルが高かっただろうが、お茶の間体験なら容易だ。ちなみにこの番組は再放送でも流されたから、KISS初体験はそちらでという同世代諸氏も多かろう。
中学では、「ラブ・ガン」を机に打ち込むのが男子の間で流行っていた。やはりわかりやすいうえ、かっこいいからだ。ジーン・シモンズが、中2の子たちがコピーできるように作っていると語っているのを読んだことがあるが、確かに手を出しやすかった。僕も中3の時に卒業記念ライブを敢行した際「Do you love me」をコピーして披露したっけ。
KISSに限ったことでなく、洋楽との接点がこの番組だったという方は多いだろう。便利な世の中でネットで当時の放送リストが出てきてびっくりだ。KISS以前には、ストーンズやCCR、クリームのラストコンサートなんてメニューもあるじゃないか。さすがだぜ、NHKさん。不良の音楽だったロックを積極的にお茶の間に届けてくれたことは、日本のキッズたちをロックジャンキーへと誘ったことだろう。そしてこの番組におけるKISSの衝撃話は、前述したとおり同世代諸氏からちょくちょく聞かされるが、僕はまだそんな悪魔の音楽に興味を持つ前夜だった。ちなみに、女子たちを夢中にさせたベイ・シティ・ローラーズも繰り返し放送されている。
そして今回、探し当てた放送メニューから見つけてしまった。僕がロッド・スチュワートにうっとりした日は、1978年の10月14日である。前年のクリスマスコンサートの模様を収録した、再放送だったのだ。お尻をフリフリ歌う金髪のロッドは、僕にとってはジュリーを超えた初めてのシンガーだった。そしてやがて「アイム・セクシー」がヒットして、翌年の1月31日に人生3枚目となるLPレコードを手に入れたのである。NHKさんのおかげでロッドと出会い、のちに黒っぽいものにハマっていく起点を中1にして提供してくれたのだから感謝である。高い受信料を払い続けているのも仕方なしだな (笑) 。
『ヤング・ミュージック・ショー 』は、ネットのなかった時代において多くの男たちの人生に影響を落としたのである。この日KISSにハマってしまい、どれだけのキッズたちが夢を描いたことか。それによって人生狂わされた方もいることだろう。僕もその一人ということだな。