ここは、僕には似つかわしくない大田区田園調布の、同じく似つかわしくない美容皮膚科医院である。還暦上等を標榜する僕だから、ついにこの領域に踏み入れるのだな。女性チックでセレブな雰囲気満載のエントランスをくぐり、僕は顔を修理することにした。って、んなわきゃーないっ。日焼け止めを塗ったことのない昭和のおっさんは、これまでもこれからも紫外線上等で生きていくのさっ。で、ここが僕のワクチン1回目の接種会場だったのだ。
打たないという選択肢が国民にはある。仲間のジャーナリストたちの中にはその選択をする者も少なくない。何年か後に何が起こるかわからない。急造すぎるものを体に入れたくない。といった意見である。ごもっともである。これに関して僕は反対意見を出すつもりはない。僕だって怖い。そもそも注射は大嫌い (好きな奴なんかいないだろうが) なチキン野郎だから、数日前からプルプルと震えていた(笑)。できるだけ注射を打つ場面から逃げてきたから、何十年ぶりになるだろう。健康診断の血液検査も震えるが、やはり取られるのと入れられるのとでは恐怖が異なる。
待つことしばし、次々とコールされては処刑台 (!?) に向かっていく男女たちだ。いちいち先生が待合室に出て来てくださり名前をコールするから、僕のハートビートはヘヴィ・メタルだぜ。だが、ほんの一瞬で待合室に戻ってくる処刑囚たちの顔に苦悶の様子はない。そしてついに「北村明広様、北村明広様」とご丁寧にツーコールだ。もうこれ以上なく高まったハートビートながら、そこはカッコつけ屋の江戸っ子である。極めて冷静に、そして朗々と「はいっ」と答えて処刑室に入った。さすがセレブな女性相手の仕立てで、それっぽい施術台があり高級マッサージ店のようである (行ったことないが)。マダム受けしそうなカッチョいい先生から「体調は悪くないですか?」と聞かれ、ここでも元気に健気に「はいっ」と答えるおっさんに対して、先生は狼に変身した。「では利き腕と逆でお願いします」と促され、僕はあと数秒後に迫ったその瞬間に対峙した。消毒液を塗るあの感じの怖いこと怖いこと。そして狼は問答無用のごとくブスッと牙を…、もとい注射針を僕の左腕に立てたのだった。「へっ、全然痛くないじゃん」と心が “キャピっ” と喜ぶ。3秒くらいだっただろうか、刺す瞬間のほんの少しの違和感程度で執行終了となった。こうなると先生は天使だ。還暦を迎えたら、この天使様に僕の顔の修理をお願いしちゃおうかしらなんて、セレブマダムのようなことを考える… はずはないが、戦いを終えた戦士に天使様は微笑んだのさ。「では、15分ほど待機してください」
ここ最近になって、2回打ったところで全開バリバリで遊べるわけじゃないという空気が流れている。しばらくは付き合い方を模索していくのだろうから、それは仕方なしだ。一昨日の情報バラエティでは、2回目接種から2週間を経ている感染者は3%だと報じていた。つうことは、約5千人の感染者の中で150人ということである。無症状の感染者を含むと、現在東京では連日2万人を超えているという専門家もいたが、であるとしても600人である。しかも重篤化しないのであれば、くそったれコロナとの付き合い方がずいぶん変わるはずだ。さっ、忘年会の計画でも練ろうかな。全国各地の読者の集い「秘密基地」の再開が見えてきたぜっ。
ちなみに僕が昨日の朝打ったのはファイザー製で、発熱はなかったが夜になると軽く朦朧としている感じだった。今朝は気分スッキリなものの、これが噂のという腕の痛みが出た。それも局所筋肉痛といった程度だ。と、これからの方のためにご報告でした!!