台本づくりに熱中していた俺は
くどいようだが燃えていた。
これほど集中して学習机に座ったことはそれまでなかった。
あの日、仮面ライダーの変身ベルトを待ったときはポーズでしかない。
このときは、原稿用紙に一心不乱に書き込んでいるのだ。
心配した親父が夕食を囲む食卓で聞く。
「なんで突然勉強しているんだ?」
そうか、親父ちょっとうれしいのかも知れないと思いながらも
「実は…、かくかくしかじか…」
と白状した。
「へーっ、それはよかった。がんばれよ」
意外なことにたいそう喜んだ。
この食卓で初めて知ったのだが
NHKの喉自慢に何度もチャレンジしたことがあるのだと。
いいことだってすごく褒めてくれ、
燃えたぎる炎に油を注いでくれたのだ。
後日、俺の机の原稿を読んだらしく
「おもしろいじゃないか」
と言ってもらい、少しの自信になったのであった。
台本もでき上がり、選んだ2人とともに練習の日々を送った。
来る日も来る日も練習だった。
なんてったってクラスの期待を背負っているのである。
しかも、俺にとってはドリフターズへと続く一直線のレールでもある。
台本に議論を重ねながら熟成させていく天才お笑い小学生たちは、
まさに真剣そのものだった。