ひとりぼっちの新幹線。

僕がバイク関連の仕事を本格的に始めたのは1994年にまでさかのぼり、同時に国内の4メーカーに訪問する機会が増えた。ホンダ以外の本社は静岡県と兵庫県だから、すなわち新幹線を使って宿泊出張となることが多い。加えて出版を始めてからはイベントが激増して、幸せなことに日本中を駆けめぐっている。「大変ですね」と言われることが多いが、出張時はむしろ体が休まることが多く、また気分転換にもなってずいぶんと仕事に役立っている。

最近の新幹線出張で感じるのは、年々ビジネスマンが減ってきていること。複数名で行っていた出張を1人で済ませているのだろう。昔はよく見かけた東京方面へ向かう夜遅い新幹線での3〜4人の宴会を、ほぼ見なくなった。1人寡黙にビールを呑んでいる方が圧倒的に多い。うちだってそうだ。以前だったらライターかカメラマンと同行していた取材を、最近ではほとんど1人でこなす通称、撮って書く“カメライター”となるのだ。雑誌広告のプレゼンのために編集長を同行させたりといった、今考えるとずいぶんリッチな環境だった。また、女性のカッチョいい方が激減したと感じるのも、気のせいでないだろう。バシッとしたスーツに身を包んだいい女は、おそらくプレゼンに威力を増すために同行させていたり、出張先でのコミュニケーションを円滑にするために連れていっていたのだろう。そんな余裕が日本のビジネスシーンからドンドン削られた、1つの結果だ。メールでのやり取りでずいぶんのことが済ませられるようになっていることも大きいだろう。そして先日、こんな究極の新幹線に乗った。

ひかり号の自由席で西明石を目指していた僕が、18年にもなる出張人生で始めて経験した空っぽ貸し切り車両だ。大阪を過ぎたら誰もいなくなって、思わずカメラに収めた。さらに凄いのは隣の車両も空っぽで、もうひと車両いってやっと2人を見つけた。後ろ3輛で3人を運んでいた、贅沢ながらなんとも寂しい光景だ。

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